入り口の先はすぐ階段だ。上に進む。
コンクリートの壁に挟まれたどこにでもあるそれは、何段が上がると踊り場にたどりつき、
明かり取りのために作られた小さな小窓がある。
さらに上がろうと上に目をやると、階段の上、左手にドアがあるのがわかった。
あの日、首藤がドアから出てきた記憶が、また一瞬浮かぶ。
「おお」と首藤は言った。
「おつかれさまでした」僕は声をかけた。
首藤はそのまま階段を下りて行った。薄い緑のシャツと茶色の綿のパンツ。
もう七年になる。
七年後、僕の前にはあの時とよく似たドアがあり、
ただ異なるのはドアに横長の小さな貼り紙があることだ。
ドアの前に立って貼り紙を読むと、そこには、やけに几帳面な文字でこうあった。
「ここではありません」
★サーチエンジン・システムクラッシュ/宮沢章夫★
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