今度の作品は、プラネタリウムと手品を題材にしています。
ぼくにとっては、こどものころから両方とも、少しこわく、また非常にこころひかれる、
という点で共通していました。
またこれらには「見ている人をだます」「目くらます」という共通点があります。
腕のいい手品師や天体解説員と、お客さんとのあいだには、
「だまし、だまされる」ことで繋がれた、堅い絆が張られているように見えます。
ふつうの生活での会話や世間話などより、コミュニケーションの質として、
よほど緊密な感じがするんです。
それはおそらく、「だまされる」とは、裏返していえば「信じている」ということだからかもしれません。
それから「熊」がでてきます。
「プラネタリウムのふたご」は「プラネタリウム」「手品」「熊」が織りなす、
いわゆる三題噺みたいな小説なんです。
われながら変な話だと思いますけれど、
「だまされたつもりで」お手にとっていただくと幸いです。
★プラネタリウムのふたご/いしいしんじ★
|