穂村 井筒さんの絵は頭が大きくないですか?
井筒 そうですか?良く言われるんですけど、僕にはこれが普通の大きさです。
割と、見たまま描く方なので。
穂村 ええ?!こう見えてるってことですか? 井筒 穂村さんとお会いして、この人信用できるなぁと思ったのは、すごく普通の人だったから。 作品がすごく破滅的なのに、とても普通の人だったので、 こういう人にこそ狂気が宿るんだなぁ、それがクリエーターだよなぁと思って安心したし、嬉しかった。
穂村 でもこの間、会社に行く途中で、遠くを見ながらおにぎりを縦に食べる人を見て、 こういう人こそ クリエーターなんじゃないかと思った。 そういう人を見ると圧倒されちゃうんですけど。 井筒 僕の妻も、酔っ払ってバックの中のものを一ずつ後ろに放り投げながら歩いたことがあって。
穂村 それは魅力的ですよね。
井筒 僕はその後ろからそれを拾いながら歩きました。
穂村 ピカソとかマチスとかってやっぱりすごいんですか? 井筒 有名な話だけど、若い頃のピカソはすごく写実的な絵を描いていて、それがとても上手だった。
後年、ピカソが素敵な抽象画で成功したのも、そういう実力があったからだ、と言う人もいるけれど、
僕はそうは思ってなくって。 もしピカソが写実的な絵を習わずに、いきなり抽象画を描いていたら
もっとすごい絵が描けたんじゃないかって。
穂村 絵の画面のバランスの良い悪いっていうのは、絵を描く人なら共通して認識してるものなんですか?
井筒 ここに何かが足らない、とか左に倒れそうな絵だ、というのは見れば誰でもわかるものだと思います。
そういうバランスがわからない人でも100枚描けば、1枚は良い絵が描けることもあると思うし。 だからそういう知識とか技術とかはいっさいわからない状態で、ただ出来あがったものだけで、
絵は判断されていいと思うんです。
★井筒啓之×穂村弘★
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