宿題

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2002年11月22日(金) クレヨン王国からきたおよめさん/福永令三
ギラギラとまぶしいライトを光らせながら、南のトンネルから電車が顔を出しました。

もうすっかり、明るくなった朝をつらぬいて、緑とオレンジの電車はからだをゆすりながら、

ホームへかけこんできます。

ずいぶん、活力にみちた元気な電車だな、と重いながら、亜有子はのりました。

高校生も一つ前の車両にのりました。

だれもいません。

乗客は亜有子一人きり。前の車両も、高校生一人きり。

うしろを見返ると、うしろはグリーン車のくもりガラスで、見えません。

ドアがしまりました。亜有子は、車内広告を見上げました。

二十人くらいのダンサーが肩をくみあい、足を高くあげておどっている写真。ホテルのショーです。

「ぶて!青春を。」

黒ヒョウのように目だけ白い黒人ボクサーが身がまえてる図。

これは新しくひらかれたボクシングジムの広告です。

「たえられるか、ハードな戦い。」

こちらは、女子プロレス選手権の興行。

どの写真も、目がギラギラとかがやいて、まだねむけのとれない亜有子をぐいとつかんで、

ゆさぶるようです。

「え、おはようございます。」

ねむそうな車内アナウンスでした。

「この電車は、なぐり電車でございます。ぞんぶんに、おなぐられください。」

なんのことやら、全然、意味がわかりません。

いきなり、ポカーンと亜有子は頭をたたかれました。

びっくりして顔を上げると、ほっぺをぶたれました。

「えッ――いたい、なぁ。」

こしをうかせたら、右の肩をコーンと音がするほどなくられ、

「わぁッ、なに、なんで。」

いくら見まわしても、どこにも、人はいないのです。



■これも「霧のむこうのふしぎな町」と同じく、小学生の頃買ってもらった本。

「頭の中におよめさんをレンタルできる」というお話、と書いてもあれですが、
主人公の亜有子がクレヨン王国に入る場面。

このあとも4ページくらいずっと殴られっぱなし。
でもこの「なぐり電車」にのらないと、クレヨン王国には入れないのです、ひどい。

マリ |MAIL






















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