今、映画館でお金を払って日本映画を楽しむ観客たちは、みんな西田尚美が大好きだ。
あたかも男子中学生のような風貌で、畳の上で行儀悪くウダウダと寝転がる姿が
もっとも似合う稀有なヒロイン。
西田尚美は宝石ではない。スーベニール。
旅先の売店で買ったオミヤゲだ。貝殻で作った人形や、花を閉じ込めたガラス玉。
子供時代に駄菓子やのクジ引きで当てたオモチャの指輪。
1ケ10円、だけどこのオモチャには“思い出”が蘇った瞬間、どんな宝石よりもまぶしく輝く。
太宰治やサリンジャーを読む少年少女が「自分だけが主人公の気持ちをわかる」ように、
誰もが初めて西田尚美を「発見した」ように錯覚する。
映画館からポケットに入れて持ち帰りたくなる。
観客を思春期にする。
★西田尚美/中森明夫★
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