宿題

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2002年08月23日(金) 惜夜記/川上弘美
いくら注いでもコップが一杯にならないと思ったら、コーヒーだったはずの液体が、

いつの間にか夜に変わっているのだった。

コップに注がれている夜を覗き込むと、表面に近いところには小さな星やガスがうずまいていて、

その底では何かが笑っていた。

ぞっとして流しにコップを運び、入っていた夜を全部こぼしてしまおうとしたが、

いくらこぼしても果てがない。

1時間こぼしても、夜はぜんぜん尽きない。

排水口に吸い込まれても吸い込まれても、尽きない。

あきらめてコップを戻してもう一度覗くと、底で笑っている声がますます高くなった。

コップを壁に投げつけると、割れたかけらの間から夜がふわふわと広がり、

ふわふわの中から笑いの主があらわれた。


★惜夜記/川上弘美★



■この後、文章は「大きなニホンザルだった」と続きます。

マリ |MAIL






















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