いしいさんは、新刊を出されるたびにたくさんの自作のPOPをもっていろいろな書店 に現われます。POPのイラストは一枚一枚違っていて、本屋の私は、何枚ものPOP の中から、自分の店のために一枚を選ぶことを、とっても楽しみにしています。 お客様は、店頭でたった一枚のPOPしか見ることができませんよね。本屋だけが、こ んな楽しい思いをしているのは、お客様に申しわけないし、なんといってももった いないなあと思っていました。 先日いしいさんがサインをしに来てくださった時、「今度『麦ふみクーツェ』とい う本を出しますよ。」とおっしゃいました。私が、「いしいさんのPOPを冊子にして 見ませんか?」と申し上げたところ、いしいさんは快諾してくださった上に、素敵 なアイディアまでもいろいろと提案してくださったのです。 こんな風にして、世界初(たぶん)の手書きPOP集は生まれました。 編集者の方が、発売前の「麦ふみクーツェ」をこっそり私に読ませてくれたとき、 「かつてない物語だと思います。」とおっしゃいました。確かにそのとおりでした。 深い悲しみと、大きな希望について書かれていている物語でした。 いろいろなことがつながっていて、この世のどこでもないところの物話のようでも あり、自分のすぐそばで起きたお話のようでもありました。 書かれた小説ではなくて、採集された物語のような感じもしました。 「ぶらんこ乗り」や、「トリツカレ男」を気に入った方なら、きっと「麦ふみクー ツェ」は大切な1冊になると思います。 いしいさんのことをよく知らなくても、お話を読むことがすごく好きという方や、 音楽が好きという方には、ぜひぜひお勧めしたいです。
★いしいしんじ「麦ふみクーツェ」について/青山ブックセンターHPより★
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