宿題

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2002年05月29日(水) 絵本ジャーナル PeeBoo 1/五味太郎vs長谷川集平
長谷川(H) 僕は自分の絵本が出なくてイライラしてたことがあって、

どこの出版社に持ってってもだめで。ほんの4〜5年前です。

そのころに本屋にいくと、五味さんの本がいっぱいならんでる。

どうしてこんな本が僕のを断った出版社から出てるのに、

僕の本が出ないんだというイライラというか、怒りがわいてきて、

五味さんの本を本屋さんの店頭で地面にぶつけたことがあるんですよ。

五味(G) ほんとかよ(笑)。

   ◇

(G) この絵がいいね、あるいはその音楽がいいねというのをね、

言葉で言うんじゃなくて、それを買う買わないという形で発言していくシステムとして、

産業資本主義というのをわりととらえてるところがあるの。

それは不健康に使っていく方法ももちろんある。

そこはいましめなちゃいけないんだけども、どちらかというとね、

僕は産業資本主義の構造っていうのはきらいじゃないんだよね。

うまく使えばいいじゃないか。

そのときに、売れる本はよくない本だといっちゃうことはつまんないことだし、

僕は絵本を純なる商品だと思ってる。

(H) 僕はそうは思ってないからね。商品作ってるとは思ってないから。

商品だとしたら、売れない絵本は失敗作ですよ。

   ◇

(H) 僕なんかが変な学校教育の中で教えられてきた絵っていうのは、

自分の内側のものを描きましょうということを重視してた。

僕はそれは変だなって思ってたんですよ。

僕は内側のものを描くよりも、外側のものを描きたいと思ってる。

一種のそういう、自分の中のものを描きましょうという傾向と、

アート志向みたいなものがいっしょになってね、

子どもの本の絵からデッサン力というか、描写力というか、

そういうものを奪っちゃったようなところがあるんじゃないかという気がするのね。

じゃあ、五味さんはどうなのかと僕考えたとき、

五味さんってけっこう外側描いてるなという気がしたのね。

(G) 外側は以外は描く気はあまりしないんだよ。

僕はもう楽でしょうがないもん。絵本作ってて。ほんとに楽だよ。

(H) そこはだからぜんぜん違うよ、僕と。
 
(G) 困ったもんだっていうぐらい楽だよ。いや、鼻唄だもん、俺。

   ◇

(H) 僕が最終的に描いてる内容というのはテーマじゃないし、たぶん思想でもないし。

なんか、たぶん性(さが)みたいなもんだろうというふうにしか、

今言いようがないところがあるね。

   ◇ 

(G) 今までの既成のたとえば本屋さんなり、流通なりをなんにも信用してないんだけど、

よくないよくないって言いながら、それはやっぱり模索していくしかないと思うのね。

やっぱり新しいものを作って、たとえば流通のことまで俺は考えていく。

そういうの俺きらいじゃないんだよね。

長谷川さんはそういう意識まったくないと思うけども・・・。

――いや、集平くんもわりかし好きじゃないの。

(G) きらいっていうよ、ぜったいいうよ・・・。

(H) わかんない。

(G) わかんないときたか(笑)。

(H) いま話してることが大事なことだとも思えないし。

(G) こういうやついるよな、必ず、ほんとに(笑)。

   ◇

(G) 絵本の作業のいちばん痛快なところっていうのは、作業を完璧にやって50%っていう感じの、

あとの50%は読み手の仕事って感じの関わり合いが、もう一度繰り返すけども、

商品のありかたとよく似てるなと思ってて。

むしろ、こういうふうに読んでくれ、ああいうふうに読んでくれ、

ごちゃごちゃごちゃごちゃいう気が僕はあまりないもんだから、読み手の自由・・・

この商品が俺やっぱり大好きだな、あらためて。すげえ好きだ。ほんとに好きだ。

(H) 僕はその商品にされるときにこぼれ落ちていくほうだから。

僕の本、商品としてはあまり商品価値がないらしい。

(G) そんなこと自分で決めることないじゃない。

(H) でも生活と深い関係がある。

   ◇ 
 
(H) 僕は、作り手はどういうふうに読者を愛していくのかと、

作品、最初アイディア浮かんでからふくらんでいくけども、そこからまたそぎおとす作業の中でね、

なんかいろんなものがあるんだろうなって思うんですよ。

必要なものをそぎおとす。

そのそぎおとしていく基準っていうのが、たぶん作り手のなかにある。

それにしか興味ないな。

   ◇

(G) 作品というよりは商品という感じで、値引きしてでも売ってしまうというぐらいのが

好きだな、ほんと。

「おみやげつけますよ」かなんか言って、風船つけたりして。そういうの大好き。

それで、ポリバケツに捨てられたりするのが、まずいなと思いながら、好きですよ、じつは。

   ◇

(G) だから、商品作ってんだよ。付加価値つけて高く売ろうと思ってんじゃないの、おまえ。

俺なんかわりと薄利多売って感じあるからさ、いっぱいつくんないとさ。

(H) なんかとってもやな感じだな、居心地悪いよ。

   ◇

(G) 基本的になんで俺に声かけたのかよくわかんないんだけど、なんでだったの。

(H) いまほんとに絵本がわからなくなってるんですよ、いろんな意味で。

それが、五味さんの話をうかがう中で見えてくるかなと思ったんだけど、

なんか企業の人と話してるみたい。

もの作ることの話にもうちょっとなればよかったなと思ってるけど。

   ◇

(H) 商品という理由での表紙の書き直しが多いと思いますよ、ふつう。

(G) ありませんよ、そんなこと。

(H) ないですか。

(G) ありませんよ、そんなこと。

(H) 五味さんはたぶん商品向きのものを最初から用意してるからじゃないのかな。

(G) うーん、それは理由はわからないけど、僕はそういう形での意識ないし、

商品がゆえに書き直しという形はまるで経験ないな。

(H) いいな。というより笑っちゃうな。

(G) そこんとこいったときにね、長谷川さんをみんな出版社界の人が

いじめすぎたんだと思うのね。

なんで彼に表紙を描き直せなんて言ったバカがいるのかっていうことについて

いま非常に気になる。


★絵本ジャーナル PeeBoo 1/五味太郎vs長谷川集平★

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