「とりあえず他人ってのは誉めとくといいですね」
゛悪意なき偽善"を標榜する東京善意友の会会長にして、
喫茶『バカボン怒』のマスターである我が師・呼元さんの言葉である。
その日、呼元さんは、真紫の革ジャンに巻毛の鬘という、
またまたコンセプト不明のコスチュームで私の前に現われた。
会うたびに彼の゛センス"には精神的に追い詰められる。
「それでもとりあえず誉めてみよ」という、これは私への試練なのかしらと、
つい深読みしてしまうのだ。
「うまい変装ですね」
よく考えると全然誉めたことになってなかったが、なんだか呼元さんは照れていた。
★大人失格/松尾スズキ★
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