それまで、戦争とは敵を殲滅することであり、敵を外に追いやることであった。
追いやる外部があった時代は、敵を地獄の外に追いやることもできていた。
ところが第二次大戦末に製造された原爆は、その威力の巨大さによって外側をなくしてしまった。
そうでしょう。地球上で原爆を使用すれば、それは、いずれ自分の身にもふりかかる。
自分のスペースが地獄になってしまう。
互いが敵として争えば、その地球規模の破壊力で双方が殲滅される。
こうして地球上の人類には敵を追い散らすべき外側というものがなくなったのだ。
この地球上のすべては自分たちの内側のスペースであり、
そのところで絶対悪の敵というものは縮んでしまった。
結果、戦いに自身をもつことができなくなった。
★科学と抒情/赤瀬川源平★
|