よるのみなとで、やせたちゅうねんおとこがくちをひらきます。
「きみにプレゼントがあるんだ」
「んまあ!」
おんなのひとがすっときょうなこえをあげてふりむく。
スカーフのはしをくちにくわえてて、へんなかっこうだけど、すごくきれいなひとです。
「いったいなんでしょうね!」
やせたおとこはポケットにいれたてをそっとだします。
おんなのひとのてのひらをとり、やさしくにぎらせます。
おんなのひとのめは、みるみるうちにうるんでいく。
うれしそうにくちびるをかんで、やっとのおもいでいいます。
「あなた、なんてすてきなこばこ!」
はこをめのまえにかかげながら、おんなのひとはくるくるまわる。
「こんなすばらしいはこ、わたし、みたことありませんわ!あなた、もうなんていっていいのやら!
まったくなんてこばこなの!」
「きみ、あのう」
くるくるまわりつづけるかのじょをみながら、やせたおとこはくちごもっていいます。
「ほんのちょっとでいいから、はこのなかみもみてほしいんだけどな」
★ぶらんこ乗り/いしいしんじ★
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