○プラシーヴォ○
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朝10時に迎えに来てもらう約束をしていた
そして朝10時に電話が鳴った
「ごめん、頭が痛い… 昼から迎えに行くよ」
ハム男の寝起きの声
いいよいいよ もう今日はいいよ 寝ておきなさい
優しく答えると ハム男はしばらく黙った後
少し寝てから電話するよ
と言った
私はこの時点で半分あきらめた 昨日、久しぶりに会う友人と 飲みに行く旨を聞いた時から 嫌な予感はしていたのだ
急に一日の予定がぽっかり空いてしまい しばらく考えて お寺に行くことにした
関西で有名な 安産のお寺 もちろん水子供養のスペースもある
電車の振動に合わせて ふと涙が落ちそうになる
二日酔いを我慢するほどでもない 私との約束
私との約束の軽さ
ハム男の中での 私の軽さ
うらうらと揺らめく春の陽射しを受けながら もうすっかり来慣れたお寺へ足を踏み入れる
水子を供養するお地蔵様のところへ行くと すでに一組の夫婦が手を合わせていた
そして私の後ろから足早に もう一人女性が来て お賽銭を入れ、水をかけようと柄杓を手にする
ところが
柄杓のそばの水が湧き出ているべきところは カラカラに乾いていた
女性が狼狽して 側にいた連れの男性に訴える
水くらいいいじゃないか
男性はそう言って女性を連れて出る
なんなんだこの寺は 賽銭箱はいたるところにおいてあるくせに 供養するのに必要なものに 手を抜くってどういうこと?
なんとなくモヤモヤしたまま電車に乗る
お寺の最寄駅から帰る途中に ハム男の家の駅がある
私は怒ってるんだ ここでハム男の家に行くのは プライドが許さない
でも
会いたい
…悩んだ末、降りた
おいしいケーキ屋でショートケーキを買って ハム男の家についた
もう16時だ
部屋に入ると 電気が点いた部屋でハム男がスカスカと 寝息をたてていた
私に気づいて目を覚ますと なんとも嬉しそうに笑顔を見せる
がちゃ子〜 がちゃ子〜と何度も呼びながら 頭をなでる
ケーキを食べ終わった私を ベッドに引き寄せ抱きしめる
「迎えにいけなくてごめんな 頭痛くて…腰痛くて…」
もう私は泣いていた
二日酔いごときで約束を破られるなんて 情けなさ過ぎる
ハム男はただ謝りながら 自分のシャツで私の涙を拭き続ける
「がちゃ子…好きだよ」
分かってるよ
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