○プラシーヴォ○
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週に数回とはいえ、私が通うようになってから ハム男の部屋には物が少しずつ増えていった
化粧水 乳液 化粧品一式 生理用ナプキン 調味料 料理道具
片手鍋一つとフライパン一つしか無かったという ハム男の台所には 所狭しと調味料が並び(まあ、一般的なものだけど) 炊飯器やトースターも設置された
だけどなぜか 今現在も、砂糖だけ置いていない
最初のうちは、コーヒーに入れるスティックシュガーを 入れて料理をしていたのだが
最近そういえば砂糖を使うような料理をしていない
「いつも揚げ物とか焼き物ばかりで 煮物なんてつくらないから、砂糖いらないね」
ハム男が急に得意げな顔をして反論した 「俺は昔、作ったもんね! ほら、魚を味噌で煮込んだやつ」
そうそう、あれは確か味が薄くて なんとも表現しがたいシロモノだったね
そしてね、ハム男 確かあれは
中絶する前夜
ラミナリアを入れてうんうん唸ってる私のために
作ってくれたやつだったね
ハム男は、『いつ』作ったものなのかは 覚えてないらしく
何事もないように再びペットボトルから お茶を飲んだ
そんな横顔を見ながら
中絶という事実に対する情熱の温度差を
感じずにはいられなかった
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