○プラシーヴォ○
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私は面白かったよ
少々、難ありげなハム男の表情を無視して 私はにっこりと笑う
『ムーランルージュ』 ニコール=キッドマンと ユアン=マクレガーの豪華絢爛な映画
タモリばりにミュージカルが苦手なハム男は 「感情移入できなかった」 と、ぶうぶう言っている
アクション映画好きなハム男 精神的で地味な映画が好きな私
白いご飯がないと不満なハム男 別に夕食がピザでもスパゲッティでも構わない私
出不精なハム男 家にいると息がつまる私
こんなに意見が一致しない人と この先やっていけるのだろうかと 下りのエスカレーターで、ハム男の後頭部を眺めながら思う
3段分、前にいるハム男
手が届かないところにいるハム男
きっと付き合っていなかったら これぐらいの距離で普通なんだろう
少し胸がうずいた
そろり、と もう1段後ろに下がってみる
他人の距離
愛しく思った
どうして側にいると 血が静まってしまうんだろう 片思いのような 狂おしいほどの動悸を 取り戻したいのに
すうすうする背中を不思議に思って ハム男がこっちを振り返った
手をこっちへ伸ばす
それにつられて とととと、と私はハム男のすぐ後ろへ移動する
私はハム男に触っていいんだね
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