○プラシーヴォ○
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ハム男と出会うまで 私の背中には真っ黒な羽根がはえていた
頼むから甘えてくれ 本音を言ってくれ キスをしてくれ 手をつないでくれ
今まで恋人になってくれた男性達は 口をそろえて、そう繰り返した
私はそのたびに、黒い羽根でバサリ、と自分を包みこみ
「そういう女性がいいのなら そういう女性を捜せばいい」
と、男性達の訴えをはねのけてきた。
いつもいつも私から好きになって近づいていくくせに 男性から心をもらった途端、 生理的に受け付けなくなる
触りたくない 顔も見たくない 下心が見えすぎて気持ち悪い セックスなんてしなくても生きていけるでしょう
それでも不思議と、既婚の男性は平気だった むしろ、抱いて欲しいと思った
4年程前、知人の紹介で逢った男性を 平常心を保てないほど好きになった 初めて、独身の普通の男性とセックスがしたいと思った
ホテルに入って、私が処女だと分かると 男性は泣いた 「ダメだよ、ちゃんと愛してる人にあげなくちゃ ボクは、ずっと一緒にいてあげられないから」
男性は、結婚していたのだ
コノママ、コレノ クリカエシ?
どうして好きになってもらうと 吐き気がするの? どうして結婚している人しか 好きになれないの?
…でも大丈夫。 私にはこの黒い羽根があるから。
プライド 孤独に耐える力
その他いろんなものが混ざって出来ている この黒い羽根
幸せにはなれないかもしれないけれど たくましく生きていける
そんな時、ハム男が私の羽根の中を覗きこんだ
「なあんだ、すっごく強そうに見えたのに 弱い子だなあ」
ガハハ、と笑いながら、黒くてバサバサの羽根を押しのけて 中にいるちっぽけな私を抱きしめた。
いつの間にか、私の羽根は真っ白になっていた。 フワフワと柔らかくて、あまり実用的ではない羽根。
守られていたい 1人になりたくない この羽根じゃ遠くへ飛べない ハム男の側じゃないと生きていけない
だけど、最近背中がうずくのだ
もしかしたらもう一度 はえかわろうとしているのかもしれない
あの逞しくて、可愛げの無い羽根
ハム男と一緒でなくとも 生きていける チカラ
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