○プラシーヴォ○
目次|←どうして?|それから?→
「ここだよ〜!」
横断報道の向こうがわで、友達が手を振っている。 青になると同時に、私はダッシュで駆け寄る。
「ご・・・ごめんね。このあたり、全然来たこと無くて お店の場所・・・分からなくて・・・仕事も伸びちゃってて・・・」
息も絶え絶えに言う私を見て友達は笑いながら言った
「いいのいいの!男性陣も、今来たばっかり! がちゃ子ちゃんくらいの時間でよかったわ」
人ゴミの中を私を先導して歩いてくれる友達。 ホッペが真っ赤になって、鼻もすすっている。
この寒いのに、携帯の電波が届くように外にでて、 方向音痴の私を電話で誘導してくれていた。
居酒屋の個室に入る。
男性4名と女性2名の視線が一斉にこっちを向いた。 コートを脱ぎながら、慌てて自己紹介する。
「遅れてすいません。 え〜と、がちゃ子といいます。普通のOLやってます」
友達が、大きな声で笑い飛ばす。 「嘘ですよ!この子、ADなんです〜!」
あ!余計なことを!
「そうなの?テレビ局で働いてるの?」 「芸能人と会ったことある?」
「いや…小さな制作会社で…テレビ局には 出入りしてないんですよ」 「演歌歌手の方達ならよくお見かけしますねえ…」
毎度聞かれる質問を、 これまた判を押したように毎度同じ答えで返す。
それより、部屋に入った時から気になっていた
私の右となりにいる、ポルノグラフィティの ボーカルにそっくりの人!
むき〜っ!かっちょええ〜!
楽しい時間は矢のごとく過ぎ…
終電に間に合うようにダッシュする私達。 2次会への希望をムンムンに表す男性陣を残して、 私達は地下鉄の駅へと消えていった。
「う〜ん、今イチだったねえ」 「そお?私、Kくんがいい!」 「ああ〜、がちゃ子が好きそうだねえ」
電話番号を交換していなかったが、
「じゃあ、がちゃ子のために 近々第2回コンパを開催しようね」 と友達が言ってくれた。
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