遠距離M女ですが、何か?
井原りり



 バカヤロー!

お金がない。

収入は、まあそこそこあるにはあるのだが、どんどん派手に出て行ってしまうから、手元に残らない。


今年はPCを3つ、PDAを1つ買った。
一つは家族みんなで使い、一つはいはらが使い、一つは92年製の窓機ノートをやっと今の時代にあったものにした。

わたしが今使っているのがそうだ。

PDAはZaurusをカメラ付きのにした。古いのはムスメにやった。

どのマシンも律儀に仕事をこなしてくれている。


今年の夏は高級ホテルに3回泊まった。

W杯の時、イタリアチームが定宿にしていたアーバンリゾートが売りのところにいはらと一泊。

富士山は曇って見えなかったが、新幹線を見下ろす高層ホテルに子どもたちと一泊。

同じく新幹線を見下ろす別の県の高層ホテルに家族全員と一泊。

どこもうっとり、だった。


だからお金がなくなったって仕方ない。
いいじゃないか、こういう人生を生きることを選択したのは自分なんだからさ。

でも蓄えもなんにもないので、職場の互助会から借金することにした。
毎月15日締め切りで月末に振り込まれるそうだ。
預金の金利は限りなくゼロに近づいていくが、借金の金利はそうもいかない。とはいえ年利3%なんて奇跡だ。

15日? 日曜日じゃん。
ってことは今日中に同僚の中で保証人になってくれる人を見つけ、郵便局にも行って2000円の収入印紙を買わねばならない。


わたしの高校の1つ下の後輩の男性に擦り寄る。

「あのですね、かくかくしかじか……」
「どうしてそんなにお金がないんですか? いったい何に使っているんですか? 年が上なんですから僕より収入あるでしょう? ご主人も働いてるんだし……」
うるせーなー。
大きなお世話だ。

「いえ、いや、まあ、その、あの、実家の母が……」
「子どもたちの塾の月謝やお稽古事が……」
「夫の事業はこのところ、左前。いつつぶれても不思議はない……」

など、あれこれつらつら、話したくもない身内の恥まで語らせたあげく

「すんません。死んだおやじの遺言で、保証人にだけはなるなと……」

ばかやろー。
それを先に言え。




2002年09月13日(金)
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