hikachi's Diary
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2003年12月05日(金) 金曜日の憂鬱 −私小説風−

かつて「花金」という言葉が流行った。
花の金曜日。つまり、夜遊び解禁デーという意味である。

365日育児中の主婦にはあまり関係がない話だが、
我が家の場合、金曜の夜はたいてい、息子は実家に宿泊する。
・・・ということは、帰りが遅くなってもOKというわけだ。

しかし、私はあまり夜遊びは得意でない。
お酒は飲めないし、カラオケも好きじゃない。
一般的に女性が好むウインドーショッピングも特に好きではないし、
(どちらかと言えば欲しいものがあるから買い物に行くタイプ)
パチンコ、ゲームセンターなどにも興味はない。
お金もあまりないし、、、

それでも、金曜日の夜だけは、なんとなく
まっすぐ家に帰りたくない気分になる。
こういうとき、ちょっとお茶を飲んだり、
おしゃべりしながら軽く食事でもして行くような
友達がいればいいのだけれど、といつも思う。

前の職場では、子持ち主婦は私くらいだったので
独身の子や、おじさんたちと飲みに行くことがときどきあった。
でも、今の職場は比較的近所に住む主婦が多いせいか、
はたまた町中でないため、ちょっと寄る場所がないためか、
なかなかそういう雰囲気にならない。
まあ、余計なお金を使わなくて済むし、
人間関係も深入りしないのである意味助かるのだが。

職場以外に友達がいないわけではないが、
最近はみんな子持ちの主婦なので、なかなか会うこともできない。
そもそも、専業主婦とフルタイム会社員では
同じ子持ちでも、生活の接点が実はかなり少ない。
生活時間帯も、生きる感覚も、ずいぶん違うのが常だ。

そんなわけで、なんとなく「帰りたくないな」
と思いつつ、まっすぐ帰宅してしまうしかない、
なんとも寂しい私である。

話は変わるが、うちの近所の公園に、
ちょっとした屋根付き、ベンチとテーブル付きのコーナーがある。
そこで時々、コンビニ弁当にワンカップ酒で
一人でひっそりと晩酌している中年男性がいる。
最初浮浪者かと思ったが、そうでもなさそうだ。
恐らく近所に住む人なのだろうが、
何故こんなところで? と思う。

先日、その男性を見て、うちの夫が
「わかんねーなー。どうせこの近所に住んでるんだろうに、
 家帰って飲めばいいじゃん?」としみじみ言っていた。
私は言った。
「駅前の屋台の焼き鳥屋が、すごく繁昌しているのと同じじゃないの」

駅前の屋台の焼き鳥屋。
家の近くの駅まで帰って来ているのに、ちょっと一杯寄って
飲んでから帰るサラリーマン。
屋台の焼き鳥屋が、とりたてて美味しいとも思えない。
きっと、彼らも金曜日の私と同じで、
帰宅前に「ワンクッション」欲しいのに違いない。

「わからん。俺には理解できん」と夫は言った。

へぇ。そうなんだ。
でもきっと、それは、あなたがサラリーマンでないから。

彼には、別段仕事にはとりたてて生き甲斐も、やり甲斐もないけど
「きちんと生活していく」ために、家族を守るために、
定年まで働くことを義務付けられている人の重荷は理解できない。

こういうとき、ほんと空しいと思うよ。私。
この人は自分の負うべきものを、代わりに妻に負わせてることすら、
全然わかっていない。

金曜日の帰宅途中、私は電車の中でそんなことを考えていた。
どんどん気が重くなるのを感じて、
駅の階段を降りながら、軽く頭を振った。
いかんいかん、マイナス思考は。

そう、きっと、うちの旦那は家にいることが苦痛でないんだろうな。
だから、寄り道したくなる気持ちが理解できないんだ。
それは、私が彼に居心地の良い家庭を提供してるということか。

そう思うことにした。

私は自宅に帰るのをやめて、両親と息子の待つ実家へ直接行った。
実家の玄関のドアを開けると、
石油ストーブの独特のあたたかい空気と、
夕飯のためのだし汁のいい匂いが鼻をくすぐった。

ああ、家庭の匂いだ。
お母さん、いつもありがとう。
ふと、涙が出そうになった。


同日の過去の日記

2002年12月05日(木) 風邪ひきさん


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