2009年02月17日(火) |
中川 昭一 : 「 帰ってきた ヨッパライ 」 の末路 |
「 侍なら、正気を失うほど酔いはせぬ 」
映画 『 七人の侍 』 より
A samurai never drinks enough to dull his wits.
Seven Samurai
深酒で ロレツ が回らないのは、ある意味、健全な証拠ともいえる。
本当に危険なのは、「 飲まないと ロレツ が回らない 」 タイプ の人だ。
ローマ で開かれた G7 出席の際に記者会見で見せた 中川 昭一 前財務・金融担当相の振る舞いは、日本政治史上、前代未聞の事件だった。
赤ら顔で、目はうつろ、しどろもどろした発言は、どうみても “ 酩酊状態 ” にあり、本人は 「 風邪薬の影響 」 と語ったが、信憑性は低い。
発言は二転、三転し、飲酒について 「 飲んでない 」、「 一杯だけ飲んだ 」、「 二杯ぐらい飲んだ 」 と、会見の度に答弁が異なる。
海外の メディア にまで取り上げられ、野党はもとより、有権者からも厳しい批判が相次ぎ、国会が空転する恐れも生じる事態となった。
結果、麻生 首相 に辞表を提出後、「 予算委員会の雰囲気を見て、自分がやめた方が国家のためだと判断した 」 と、中川 氏 は辞任を表明した。
元来、中川 昭一 氏 の 「 酒豪 」 ぶりは有名で、永田町の界隈に知らぬ者はおらず、ワイン の一杯や二杯で “ 酩酊 ” するとは、誰も信じていない。
おそらく、一杯〜二杯ではなく、一瓶〜二瓶は飲んだと思われるが、会見に臨ませた財務官僚は、なぜ、引き留めなかったのだろうか。
風邪薬のせいにするなら、マスク を付け、黙って座らせておけばよかったわけで、それなら、赤ら顔も、うつろな目も、言い訳が通ったはずだ。
就任当初から、「 いつか彼は、酒で大きな失敗をする 」 と大予言していた政界関係者もいたが、まさか現実に起きるとは、誰も想像し得なかった。
麻生 政権 にとっての大打撃であることは間違いなく、内閣支持率がさらに低下し、政局運営が困難になることも、避けられない模様である。
各国首脳との親交を深めるため、美酒を酌み交わすことについては、何の問題もなく、サラリーマン の接待と同じで、それは仕事の一部でもある。
あるいは、激務を癒す “ 愉しみ ” として、個人的に酒を飲むことも、別に、他人から咎められる筋合いのものではないだろう。
だが、自制できないほど酩酊するのは、緊張感が欠如している証拠であり、国民の代表として不適格だと判断せざるを得ない。
冒頭に挙げた 映画 『 七人の侍 』 の名台詞は、農民出身である 菊千代 が 「 偽侍 」 であることを、勘兵衛 が見抜く場面で使われた。
いつ敵に襲われても対処ができるよう、侍が警戒心を解かないのと同じで、閣僚たるもの、非常時に対峙できる心構えが、常に求められる。
大人と子供の違いは、「 自分を コントロール できるか否か 」 の差でもあるが、近頃は、中川 氏 のように、自制能力の欠けた大人が目立つ。
いつまでも遊び癖が抜けず、定職に就けない若者や、酒、麻薬などの中毒に溺れたり、ギャンブル に ハマ って脱け出せない大人が溢れている。
インターネット や ゲーム に夢中で、仕事が疎かになる人や、自分の体調管理、あるいは、ストレス管理ができず、心身を病む人も後を絶たない。
中川 氏 を非難する人の中にも、自分を律し、本能や欲望を抑える 「 侍 」 の心構えが出来ていない人は、かなり居るように思う。
未熟な部分は時間を掛けて直せばよいが、少なくともそれが 「 恥 」 であることを他人の醜態から学ぶべきで、そうしない人は、批判する資格もない。
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