「 知識の不平等こそが、売り込みの カギ である 」
ディール・O・ガスターフソン ( アメリカの不動産会社役員 )
Inequality of knowledge is the key to a sale.
Deil O. Gustafson
ある日、先物取引の予想家から、一本の電話が掛かってくる。
彼は、「 100% 確実な “ 儲け話 ” がある 」 と話し始める。
突然の電話で、そのように荒唐無稽な話をしても、当然、誰も信用しないのだが、彼は 「 来週、大豆の値が確実に上がる 」 と告げ、電話を切った。
翌週、たしかに大豆の値は上がり、不思議に思っていたら二度目の電話が鳴り、今度は、値下がりする品物の名前を教え、また電話を切る。
またも彼の予想は的中し、感心しているところへ三度目の電話が入って、今度は 「 私に投資してくれたら、確実に儲かりますよ 」 と持ちかけた。
度重なる的中により、すっかり信用した人々から、彼は大金を預かったが、投資家たちにとって不幸だったのは、彼が “ 詐欺師 ” であったことだ。
種を明かせば、実に簡単な手口なのだが、なぜ、彼が連続して予想を的中できたのか、その方法がわからずに、多くの被害者が発生した。
まず彼は、投資家の リスト を手に入れ、その半分には 「 大豆が値上がりする 」 と電話し、残り半分には 「 値下がりする 」 と告げた。
翌週は、予想が的中した側にだけ電話し、その半分に、今度は 「 値下がりする 」 と電話し、残り半分には 「 値上がりする 」 と告げたのだ。
最初に電話をしたのが 200人 だと仮定すれば、この方法で 50人 には、あたかも 「 予想が連続して的中した 」 ように見せかけられる。
これは、数十年前から使われてきた 「 古典的な詐欺の手口 」 なのだが、意外と見破られ難いようで、いまだに騙される人が少なくない。
用心深く、「 振り込め詐欺 」 などの類には引っ掛からない人も、“ 儲け話 ” の誘惑に負けてしまうと、痛い目に遭うので注意が必要だ。
たまに アメリカ では、新しい ガソリンスタンド が出来たときに、その近所にある会社や学校の食堂へ、石油会社の制服を着た男がやってくる。
そして、「 オープン記念に ガソリン が半額になる クーポン を販売します 」 と告げ、大勢から現金を徴収する。
これも詐欺で、騙された人は給油の際に クーポン は 「 ただの紙切れ 」 だと気付くわけだが、職場や学校に来たことで、警戒心が薄くなるようだ。
古着屋に行けば、石油会社のロゴ ( Shell や Esso など ) の入った服が簡単に入手できることも、つい、忘れてしまいがちである。
被害が小額であるなら、笑って済ますこともできるが、予期せず大金を失う羽目にならないよう、特に “ 儲け話 ” は警戒したほうがよい。
健康寝具販売会社 「 L&G 」 の 会長、波 和二 容疑者 (75) ら22人が、組織犯罪処罰法違反 ( 組織的詐欺 ) の容疑で逮捕された。
彼が被害者らに語った “ 儲け話 ” は、どう考えても 「 あり得ない話 」 なのだが、人は冷静さを欠いてしまうと、判断力を失う生物のようだ。
報道だけを見ると、「 こんな ホラ に騙されるかな 」 とも思うが、おそらく、出資者を信用させるために、何らかの工作を仕掛けていたのだろう。
罪名が詐欺でなくとも、食品の賞味期限を偽ったり、中国産なのに国産だと表示したり、昨今は 「 詐欺まがいの偽装 」 が後を絶たない。
耐震偽装の マンション を建てたり、「 カシミア 入り 」 と表示しながら、実は入っていない セーター を売ったり、よく考えると、詐欺師だらけである。
ただ、詐欺や偽装を非難する我々も、100% 正直な姿勢で生活しているかといえば、いささか疑問であり、堂々とは胸を張れない現実がある。
冒頭の言葉にあるような、「 相手の無知を利用する 」 場面や、嘘も方便だなどといった言葉で誤魔化している事柄が、いくつか頭に浮かぶ。
企業は従業員を不当解雇し、やる気の無い従業員も企業に 「 一生懸命、働きます 」 と騙し、親は子を騙し、子は親を、妻は夫を、夫は妻を騙す。
女性の 厚化粧 や、 アンチエイジング や、ブラジャー 内に パット を足して “ 増量 ” するのも、工夫といえば工夫だが、ある意味、偽装でもある。
だから、「 付き合い始めた頃 “ 仕事より君が大事 ” って言ったじゃない 」 なんて一方的に責められても、こちらとしては困るわけで …
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