Tonight 今夜の気分
去るものは追わず、来るものは少し選んで …

2008年12月16日(火) ゴーン に足りない 「 経営の美学 」



「 勇気とは、窮しても品位を失わないことだ 」

                  アーネスト・ヘミングウェイ ( アメリカの作家 )

Courage is grace under pressure.

                               Ernest Hemingway



今夜は、これを読まれた皆様に、ある問題の解決策を考えてもらいたい。

喫煙者の方は喫煙者の視点で、そうでない方は非喫煙者の視点で。


あるところに、従業員1000名の会社があり、その一割にあたる100名が喫煙者、残りの900名が非喫煙者で構成されている。

昼食や休憩に利用する社員食堂は禁煙だが、隅の一角に喫煙スペースが設置されており、そこで喫煙者はタバコを吸うことができる。

ずいぶん景気の良い頃に建てられた社屋なので、食堂にも、喫煙スペースにも、大型のテレビが据え付けられ、社員の憩いの場となっている。

ある日、喫煙スペースのテレビが壊れ、修理するにも部品が無いために、喫煙者の代表が新品購入を陳情したが、不景気のせいか、断られる。

会社の備品とはいえ、業務の遂行に不可欠な代物でもないので、社長は、「 社で負担しないが、皆で費用を出して購入するのは自由 」 との意見だ。


喫煙者の代表は、仲間の強い要望を受け、全社員に対し 「 新しいテレビを買うとすれば30万円が必要、皆で300円づつ負担して欲しい 」 と訴えた。

すると、非喫煙者の中から 「 おいおい、非喫煙者にとっては何のメリットも無いテレビに、なぜ、費用の負担を迫るのか 」 という不満が噴出した。

喫煙者たちは、社長の言う “ 皆 ” とは 「 全社員 」 を指していると解釈し、非喫煙者たちは 「 全喫煙者 」 を指していると受け止めたようだ。

喫煙側から、「 仲間の一割が困ってるんだから、これは全体の問題だ 」、「 300円ぐらい、生活に影響ないだろ、ケチ! 」 などの反論が上がる。

非喫煙側は、「 テレビが観たいのなら、タバコをやめろ 」、「 喫煙者だけで負担したって3000円だろ、生活に影響ないはずだ! 」 と、やり返す。


議論のポイントは 「 全体の一割 」 という対象者数を、どのように評価するかというところにあり、それで判断が分かれるといっても過言ではない。

喫煙側も、非喫煙側も、一割という数字を 「 量的に少ない 」 と感じてはいないが、「 一割の問題は、全体の問題 」 と思う、思わないの差がある。

また、「 数が多いから、全員で救済すべき 」 という発想と、「 少数派でないなら、自分たちの力だけでも解決できるはず 」 という発想に分かれる。

現在、アメリカの自動車業界や、金融業界に対する 「 公的資金の投入 」 について賛否両論あるが、これも、似たような話ではないだろうか。

業界を立ち直らせることに異議はないが、税金を原資とする公的資金は、本来、誰もが平等に利益を享受できる 「 公益 」 に、使用は限定される。


日産自動車 の カルロス・ゴーン 社長 は、「 雇用の一割を担う自動車業界は、国にとっても重要で、欧州並みの政府支援が必要 」 と語った。

日本の自動車業界から、同様の声が上がらないことについては、「 問題を抱えていると見られたくないので、誰も言い出さない 」 と、不満を述べた。

たしかに、そういう面もあるだろうが、日本の良識ある産業人たちは、まず、「 自分たちで努力するのが先 」 という認識が強いのも、事実である。

従事する者が多いのなら、広く国民の支援を仰がずとも、人件費の抑制をはじめ、自分たちで出来るコストダウンの方法が、いくつか考えられる。

日頃は社員に、実績重視、能力評価主義などと語っておきながら、赤字になりはじめた途端、国に物乞いするような 「 依存心 」 の強い者は少ない。


景気回復のため、主幹産業を救うため、安易に 「 公的資金を投入しろ 」 と語る人もいるが、税金を私企業に注入するのは、よほどの覚悟が必要だ。

規模が大きいために、影響を考慮して国が救済するという前例をつくると、買収、合併を繰り返し、やたら図体だけデカい 「 無能企業 」 も現れる。

それに、税金を使うということは、たとえば 「 愛する我が子を自動車事故で失くした親 」 からも、自動車会社の救済資金を、強制徴収することになる。

以前、公的資金で日本の銀行を救済したときも、「 銀行から融資を断られて破綻した経営者 」 の税金が、銀行救済に使われる理不尽もあった。

業況が厳しいことは理解できるが、冒頭の名言が示す通り、苦しいときこそ品位を失わず、経営の原点に還って努力することを、ゴーン に求めたい。






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