2008年12月10日(水) |
大不況で “ 切り捨てられる人 ” を招いた 「 社会の選択 」 |
「 仕事 と キャリア の差は、週に40時間働くか、60時間働くかの違いだ 」
ロバート・フロスト ( アメリカの詩人 )
The difference between a job and a career is the difference between 40 and 60 hours a week.
Robert Frost
長く働けばよいというものではないが、ときには、ハードワーク も必要だ。
才能があっても、楽ばかりしていて、人並みの成果が得られることはない。
人それぞれ、「 仕事 」 に関する意識や定義付けは異なり、どれだけ労力を尽くしたかという意味での 「 一生懸命やりました 」 と語る水準も違う。
自分に厳しい人は、長時間労働に耐え、必死で働いても、思わしい結果に到達できなければ、「 こんなのは “ 仕事 ” といえない 」 と猛省する。
自分に甘い人は、人並みの働きが出来なくても、「 俺は “ 一生懸命 ” に、汗だくで通勤してるんだ 」 と、人並みの報酬を受け取る権利を主張する。
企業にとってみれば、その人が 「 業績に貢献できたか 」 が重要であって、「 どのような苦労をして職場に来たか 」 は、まったく興味の無い話だ。
公務員なら、あるいは通用するかもしれないけれど、こうした発想の人物が民間企業に就職した場合、企業も、個人も、不運としか言いようがない。
昨今の世界的な不況を、「 世界恐慌以来の大不況 」 などと形容する人もいるが、「 資本主義が始まって以来の大不況 」 になる恐れも十分にある。
連日の報道で、世界的シェアを誇る企業の大規模な人員削減や、期間工、派遣労働者などの解雇が伝えられ、不安を切実に感じる方も多いだろう。
私の仕事として、企業の人事部をサポートする役目も仰せつかっているが、このところ、「 リストラ 」 にまつわる作業依頼が殺到し、とにかく忙しい。
闇雲に首を切るだけなら簡単だが、退職者の再就職を支援する責任もあるので、不況時に解雇するというのは、なかなか大変な作業になる。
すぐにも再就職が可能な “ 売れ筋 ” の社員は、もともと整理対象になっていないわけで、解雇された社員には、厳しい現実が待ち受けている。
それでも、製造業の場合には、経験の 「 蓄積 」 が評価され、生産部門の管理者や、業界に精通している営業経験者などは、引き合いがある。
彼らの豊富な知識や経験、仕事を通じて培われた技術を新卒者に求めた場合、相応の育成コストが掛かるのだから、価値が認められて当然だろう。
ここで問題になるのが、「 仕事 と キャリア の違い 」 であり、単なる労働としか仕事を捉えなかった人と、情熱をもって働いてきた人の違いである。
新卒者の採用では、学歴の優劣が モノ を言うけれど、中途採用の場合には、職歴と、その人の 「 仕事に対する姿勢 」 が、大きな判断材料になる。
採用の業務も経験しているので、「 各企業の面接官にウケる面接術 」 を伝授するが、仕事に関する当人の意識は、会話の中で ボロ が出やすい。
年の瀬に解雇され、社宅や寮を引き払い、「 明日から住むところも無い 」 と嘆く非正規雇用の人々や、中高年退職者の姿が、ニュース で映される。
彼らの生活を顧みず、労働力だけを利用した企業側や、制度に歯止めをかけなかった政府の無策ぶりについて、一様に マスコミ は批判的だ。
だが、自らの意思で正社員の途に就かなかったり、長期的な雇用を避け、自らを労働力として 「 切り売り 」 する途を選んだ人も、多いのではないか。
同僚が休まず働くのを尻目に、「 必死で働くだけが人生ではない 」 などと、自らは競争に参加せず、年功序列に甘えた中高年社員も数え切れない。
つまり、大不況になれば 「 たちまち切り捨てられる人々 」 が現れるのは、労働の多様化を求めた “ 社会の選択 ” であることも、また、事実なのだ。
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