Tonight 今夜の気分
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2008年09月11日(木) 墓穴を掘った オバマ



「 他人に落とし穴を掘る人は、自分がその穴に落ちるかもしれない 」

                                     ロシアの諺

He who digs a hole for another may fall in himself.

                                Russian proverb



最近、クールポコ という二人組の芸人が、お笑い番組に出ている。

餅をつく格好で 「 やっちまったな! 」 と叫ぶのが、彼らの芸風だ。


これは、職場や家庭で、つまらない ミス をしたり、失言を放った人などに、彼らの真似をして 「 やっちまったな! 」 とやれば、素人でも ウケ る。

周囲を観察すると、けっこう 「 やっちまってる人 」 は居るもので、場違いなファッション、空気の読めない会話など、その対象は広範囲に及ぶ。

今週、最も 「 やっちまったな! 」 と感じたのは、次期アメリカ大統領候補として、民主党の代表に選出された バラク・オバマ 上院議員 である。

彼は、対立する共和党の マケイン 陣営 が 「 変革 」 を訴え始めたことを、「 豚に口紅を塗ることはできるが、でも、豚は豚だ 」 と述べて批判した。

マケイン 陣営 は、これを 「 女性の副大統領候補 サラ・ペイリン 女史への侮辱だ 」 と非難し、全米のマスコミが大きく取り上げる事態に発展した。


アメリカも日本と同じく政党政治を行っているが、大統領選出に関しては、政党でなく、個人の得票で決まる仕組みになっている。

そのため、候補者の人柄や個性に注目度が集まるので、場合によっては、支持政党と異なる候補者を有権者が選ぶことも、けして珍しくない。

各候補とも頭を悩ませるのは、ある特定の層から好まれる印象的な魅力を放つことが、別の層からは、敬遠される理由になりかねないという現実だ。

共和党の マケイン 候補 は、保守派の厚い信頼を受けながらも、民主党の支持基盤である リベラル な層には、どうしても弱い一面を持つ。

民主党の オバマ 候補 は、黒人初の大統領を望む層に熱烈な支持を受けながらも、やはり、保守派には敬遠されがちな側面を持っている。


各党の代表を決める予備選で、オバマ 候補 は ヒラリー 議員 との激闘を勝ち抜き、対する マケイン 候補 は、さしたる苦労もなく選出された。

当初、「 ヒラリー 優勢 」 といわれた予備選を突破するために、オバマ 陣営 は、半ば泥試合に近い中傷合戦を展開するしかなかった。

過熱気味の予備選は、負けた ヒラリー を支持する人々に遺恨を残し、同じ民主党の候補でありながら、「 オバマ 憎し 」 という反感を抱かせた。

実際、予備選終了時に行われた調査で、「 オバマ に入れるぐらいならば、マケイン に一票を投じる 」 と答えた ヒラリー 支持者も少なくはなかった。

オバマ 候補 には、「 予備選で “ ヒラリー 支持 ” を唱えた人々を、本選で取り込む 」 ことが重要で、それは、勝利への必須条件でもあったはずだ。


長く熱い予備選の名残か、オバマ 候補 は、禁断の 「 女性蔑視発言 」 を繰り出し、手痛い 「 女性票 の損失を招く危機 」 に陥ってしまった。

当然、女性初の大統領誕生を望んだ層の中心は、ほかならぬ女性有権者たちで、まさに、この発言は 「 やっちまったな! 」 という失言である。

ヒラリー 支持の女性だけではなく、オバマ 候補 を支持し、差別的な態度を嫌う層にも、この発言を不快だと感じた人は多かっただろう。

折しも、全米を深い悲しみに覆った 「 9.11 」 の前後は、全米に保守的な ムード が高まる時期でもあり、趨勢が、マケイン に動く可能性も出てきた。

ときに、対立候補への中傷に近い攻勢も必要だが、中傷の対象とする人物や、戦う時期について、オバマ 候補 は選択を誤ったとしか考えられない。


オバマ 候補 にしてみれば、ヒラリー との接戦を制した後、今度は共和党が副大統領候補に ペイリン 女史 を擁立したことで、焦りを感じたのだろう。

彼女は、持ち前の美貌に加えて、アラスカ州の知事を務めた実績があり、見た目も中身も、ヒラリー 以上の 「 強敵 」 と考えて間違いない。

私生活では、陸軍に志願入隊した長男や、ダウン症児の次男を含む5人の母親で、全米の 「 働く女性 」 たちに、カリスマ的な人気を誇っている。

その一方、全米ライフル協会会員で、硬派な政治理念を掲げる姿勢から、共和党に多い 「 タカ派の男性 」 からも、好意的な支持を得やすい。

最近の世論調査でも、彼女が加勢したことで、女性票に弱いとされていた マケイン 候補 の支持率は急増しており、共和党には心強い存在だ。


相手の弱点を突き、醜聞を追求するのは、選挙戦の常套手段でもあるが、それは 「 同じ立場にある有権者を、同時に攻撃すること 」 でもある。

その対象者が、ごく少数の場合なら得票に影響しないが、性差別によって 「 女性全体を敵に回す 」 と、これは致命的な失点になりかねない。

日本の民主党もそうだが、自分たちの能力を示さずに、中傷の繰り返しで 「 落とし穴を掘る 」 戦法を続けていると、いずれ自らが、そこに転落する。

骨のある硬派な男性票は マケイン が獲得しやすいので、オバマ としては、女性票や、女々しい男性の票を数多く取り込まなければ勝てない。

メディアから優勢と報じられて調子に乗ったのか、元来、落とし穴を掘るのが好きなのかは不明だが、彼が 「 やっちまった 」 のは明らかなようだ。






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