Tonight 今夜の気分
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2006年11月04日(土) 上海当世事情 〜 上海の光と影編 〜



「 満足する人だけが、十分に持つ者なのだ 」

      ベンジャミン・フランクリン ( アメリカの科学者、政治家、文筆家 )

He that's content hath enough.

                               Benjamin Franklin



難解な短文だが、精神と物質の関係を深く説いた名言とされている。

心に不満があれば、物質的に多くを持っていても、豊かだとはいえない。


急激な経済成長を遂げた上海では、高層マンションに住み、高級車を乗り回す中国人ビジネスマンの姿が目立ち、なんとも景気のよい話である。

いまでも、地味で画一的な人民服に身を包み、自転車や、日本で払い下げになった原付バイクに乗る人はいるが、その姿は少ない。

しかしながら、少し田舎のほうまで行くと、崩れそうな土壁の古い家に住み、質素な暮らしを続ける人々の様子を目にする。

上海市内でも、皆が一様に富んでいるわけではなく、物価の上昇に所得がついていかず、相変わらずの生活を過ごしている人も多い。

いま中国は、日本の比ではない極端な 「 格差社会 」 になっている。


年収が30万円程度の人もいれば、数千万円〜数億円の人もいて、上海の平均所得を計算するのは、とても困難な作業である。

開発の遅れている内陸部になると、世帯平均の年収は20万円〜40万円程度で、上海のお金持ちに比べたら、一ヶ月のお小遣いにも満たない。

これで クーデター が起きないのは不思議だと言う人もいるけれど、日本と根本的に違うのは、中国では 「 貧乏でも食べていける 」 ところだ。

贅沢品には税金が多くかけられているので手が出ないが、粗食に耐えれば、驚くほど物価は安いし、農村部では食料の自給率も高い。

だから、給料は低くても 「 可処分所得 」 の割合が高かったりして、十分に蓄えながら余裕のある生活をしている人も多いのである。


このように格差のある状態を好ましくないと感じている人は、意外と、所得の高い富裕層の中に多く、将来的な 「 治安の悪化 」 を懸念している。

たとえ貧乏でも、北朝鮮などの貧民とは違って食べていけるのだが、それでもやはり、他人が贅沢をしているのを横目に見ると、欲が出るものだ。

正攻法で稼ごうとする人ばかりなら問題ないが、なかには悪事を働いたり、手っ取り早く横取りしようと企む不心得者も現れるだろう。

実際、犯罪の増加率、事件、事故の発生率は急激に伸びており、そこそこの生活で満足する人たちにとっては、けして暮らしやすい街でもない。

昔に比べると、警察官の資質は向上しているけれど、それも、都市型犯罪への対応を迫られている証拠なのだろう。


1970年代に比べると、上海の 「 精神病患者数 」 は5倍に膨れ上がり、都市のストレスに潰され、挫折する人々の割合が増加している。

私のような出張者にとっては便利なことだけれど、道路が整備され、自動車の数が増えたことも、上海市民の悩みの種になっている。

また、建設ラッシュのため、少しでも古くなった建物はすぐに取り壊されて、街の中は排気ガスと、建材の塵などが立ち込め、健康被害も起きている。

日本も、高度経済成長の最中、置き去りにされた環境汚染や公害問題などで相応の痛みを伴ったが、上海も近い将来、同じ課題を残すだろう。

とはいえ、この 「 お祭り景気 」 を止めるわけにもいかず、海外からの投資も集中しているので、さらに開発の速度は加速していく模様だ。


2008年度のオリンピック、2010年度の万博に向けて、北京⇔上海 間の新幹線敷設や、高速道路の拡張、空港のスロット増設など開発は進む。

それは、上海以外の中国沿岸地域にも経済効果を及ぼすが、相変わらず内陸地域、山岳地帯などには無縁の話で、ますます格差は拡大する。

中国には徴兵制度がなく、貧しい田舎の人は報酬を求めて軍隊に志願し、富裕層は 「 一人っ子政策 」 もあって大事な跡取を入隊させない。

つまり、軍人の大部分は 「 貧しい田舎の人 」 で構成されており、貧乏でも食べていける現在は問題ないが、それが崩れると暴動が起きやすい。

再び 「 文化大革命 」 のように劇的な政変が起きる可能性も否定できず、上海で成功している人の多くは、その不安を忘れていない。






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