Tonight 今夜の気分
去るものは追わず、来るものは少し選んで …

2004年09月19日(日) 秩序を乱すのは誰だ


「 若い頃は自由を熱心に説いた。

  歳をとってからは秩序を説いている。

  自由は秩序から生まれるという大発見を、私はしたのだ 」

                          ウィル・デュラント ( 教育家 )

In my youth I stressed freedom, and in my old age I stress order.
I have made the great discovery that liberty is a product of order.

                                 WILL DURANT




日本人の 9割が、「 ここ10年で日本の治安は悪くなった 」 と感じている。

内閣府が初めて行った 「 治安に関する世論調査 」 の結果である。


治安が悪化した理由 ( 複数回答 ) については、「 外国人の不法滞在者が増えた 」 という回答が 54,4% と、最も多かった。

たしかに、どこの国でも 「 外国人の不法滞在者 」 が正規の職に就くことは難しく、彼らが生きるため、裏稼業に手を染めるのは自然の摂理だ。

これを防ぐには、入国を厳しく監視するなり、一部の国や地域からの入国を制限するなり、江戸時代以前のように 「 鎖国 」 するしかない。

あるいは、世界一 「 外国人の受け入れに関して寛容な国家 」 となり、難民でも犯罪者でも無条件に受け入れ、「 合法滞在者 」 とする方法もある。

もちろん、そんなことをすれば今以上に治安は悪化する可能性が高いので、誰も賛成しないだろうし、やるべきではない。


外国人の受け入れをどの程度 「 厳密に行うか 」 は、外交問題でもある。

厳しくすれば治安維持には効果的だが、諸外国の反撥は避けられない。

国家間の信頼関係が揺らぐばかりか、身許のしっかりした 「 合法滞在者 」 の行き来にも支障が出て、お互いの経済発展にも損失が大きい。

たとえば、ハワイへ出掛けるのに 「 ビザ 」 が必要となれば日本人観光客の数が激減するように、貿易や、経済交流の面で多大な影響がある。

かといって 「 野放し 」 というわけにもいかず、民意は監視の強化を望んでいるが、国会では 「 外国人投票権 」 など、逆方向に議論が向かっている。


治安悪化理由の第二位は、「 青少年の教育が不十分 」 というものだった。

これについては 「 犯罪の低年齢化 」 であるとか、「 少年犯罪の凶悪化 」 という事態に、危機感をもつ人々が多いことを表しているのだろう。

しかしながら 「 犯罪白書 」 などによると、少年による犯罪が全体に占める割合というものは、平成7年以降は低下しているのだという。

実際のところ、たしかに 「 良からぬ子供 」 が多いことも事実ではあるが、犯罪の主役は圧倒的に 「 子供より大人のほうが多い 」 はずだ。

男子生徒が女教師をレイプする事件と、男子教師によって女生徒がレイプされる事件を比べても、どちらが 「 日常的で数が多い 」 のかは明白だ。


どうも 「 大人の社会が悪い理由を、子供たちのせいにする 」 という考え方には矛盾があり、「 青少年の教育が不十分 」 という回答はどうかと思う。

大人側から子供たちになされる非難の多くについては、大人たちが自分の問題を否認し、子供に投影したものといえなくもない。

近頃の子供は 「 キレやすい 」 というが、成熟し、分別盛りの大人も、些細なトラブルから殺し合いを演じ、十分に 「 キレやすい 」 のではないか。

さらにいえば、子供がキレやすいのは脳の発達生理学上は自然なことで、システムとして未完成な脳が興奮しやすく、制御が不十分なのは当然だ。

つまり、犯罪の統計データからみても、頭脳の発達メカニズムからみても、子供にばかり治安の責任と問題を押し付けることは、できないはずである。


私自身は、「 日本の治安が悪化した最大の理由 」 について、「 行き過ぎた人権擁護 」 にあると思っている。

犯罪の初期段階で、ストーカーや、身近な暴力に怯えたりして警察へ駆け込んでも、「 人権とプライバシーの保護 」 を口実とし、捜査を開始しない。

実際に、正義感の強い警察官がいて、そこに介入したとしても、行き過ぎた人権擁護の枠の中で、やれることは限られている。

ネットの世界をみても、公序良俗に反する暴論が罷り通り、自由を獲得する一方で、それを非難する意見が 「 個人的な中傷 」 として削除される。

相手が何者であっても 「 人権 」 が存在することは事実で否定できないが、それを盾にして 「 何でも許される社会 」 では、秩序の維持など困難だ。


しかも、現代日本における 「 人権 」 についての考え方は、ご都合主義で、世論に左右されやすく、明確な指針がない。

先日、大阪で無差別に小学生を殺傷した宅間被告の死刑が執行された。

たとえ精神鑑定の結果がどうであっても、彼の精神を 「 正常だ 」 と思う人は皆無に等しいだろう。

法律上、著しく精神に異常をきたしている者は処罰を免れる項があり、他の事件において、それを理由に刑の執行を免除された者も少なくない。

その手続きを無視し、強引に刑罰を言い渡すと 「 人権団体 」 が黙っていないし、たとえ再犯の恐れがあっても、後々まで追尾されることもない。


ところが、宅間被告の死刑については、あまり誰も騒ぎ立てない。

人権にうるさい団体も、同じように精神を病んでいる人間も、この一件に関しては世間と歩調を合わせ、「 殺せ、吊るせ 」 の大合唱である。

たしかに精神鑑定などで 「 責任能力アリ 」 と認められたのだろうが、かといって、彼の精神状態を 「 正常 」 と認めることは難しいはずだ。

それに、本来 「 責任を負う 」 ということは、対応する 「 能力 」 の問題ではなく、果たすべき 「 義務 」 の問題で、精神鑑定そのものが矛盾している。

おそらく、宅間被告の精神鑑定が 「 責任能力アリ 」 と出たことで、内心はホッとして安堵しているのは、各種の人権団体や、人格異常者であろう。


つまりは、人権団体も、人格異常者も、持論は覆したくないが 「 世論を敵に回す 」 ことは希望していないのである。

あれだけの惨事を前に 「 宅間被告は無罪 」 と主張する度胸はなく、曖昧な小事については、常に天邪鬼な持論を展開するのが彼らの十八番だ。

そういった、場当たり的で、哲学も、思想も、文化もない 「 自称、人権家 」 なる連中に、日本の治安は乱され、振り回されてきたのである。

治安維持にかぎらず、憲法も、自衛隊論議も、経済政策も、年金問題も、金融の再編も、森羅万象、すべてにおいて天邪鬼が邪魔をする。

そんな世の中を 「 昔に比べて文明が高度化した 」 などと誤解するのは、「 勘違いもはなはだしい話 」 で、「 住み難い社会 」 に変貌しただけだ。


( 本日のおさらい )

「 行き過ぎた人権擁護社会は、文明の高度化ではなく、住み難い社会 」

* 一部の賢そうなアホに、マトモな人は振り回されるという論理


( お知らせ )

今日から22日まで、旅行のため不在します






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