ちょっと目を離すと、巷は 「 空前の韓国ブーム 」 に沸いている。
その発端は、一つのテレビドラマから始まったようだ。
私が最初に、ドラマ 「 冬のソナタ 」 を観たのは、たしかNHK衛星第二放送で、深夜の時間帯だったように記憶している。
意図的に鑑賞したわけではなく、その番組の前に放送されるプログラムを観ていて、たまたまチャンネルを変えなかったので自然に視聴した次第だ。
映画の世界では、近年、「 シュリ 」 を皮切りにして、興味深い韓国作品が数多く日本でも紹介されるようになって、個人的な関心を強めていた。
ただ、韓国のテレビドラマというものを観たのは初めてだったので、どのようなものだろうかと思い、「 覗き見感覚 」 で眺めてみた。
途中からなので物語の流れを掴み難かったが、連夜、同じ時間帯に続きが放映されていたので、3話続けて鑑賞したが、そこで 「 飽きて 」 しまった。
誤解の無いように敢えて申し添えると、けしてこの作品が 「 不出来 」 だと言いたいわけではなくて、自分の趣味に合わないというだけの話である。
作品の印象としては、「 映像が美しい 」、「 音楽が心地よい 」 など、けして悪いものではなかったということも、付け加えておきたい。
その後、「 冬のソナタ 」 や、あるいは主演した 「 ぺ・ヨンジュン 」 のファンは日本国内に急増し、現在のブームに至ったようである。
周囲にも、そういう方がいるので、「 その魅力とは 」 について尋ねたりもするのだが、なかなか 「 言葉では言い表せられない 」 らしい。
断片的には、「 純愛 」 とか、「 誠実 」 などといった単語で賛辞を並べられるのだが、それらを 「 一本の線 」 に結んで分析するのが、ちょっと難しい。
その一人、友人の奥様 ( 38歳、子供二人 ) の場合は、ぺ・ヨンジュンの話題をふると、目が潤み、遠くの方を見つめるような様子になる。
一応、私との会話は継続しているのだが、心はどこか 「 地平線の彼方 」 へでも旅立ってしまっているかのようである。
ちょっと前までは 「 キンキ・キッズが大好き〜♪ 」 と言っていた人なので、いづれは別のタレントに興味が移るような気もするが、今はそんな調子だ。
ただ、彼女の弁によると、「 キンキ・キッズが好き 」 という感覚と、「 ぺ・ヨンジュンが好き 」 という感覚には、大きな違いがあるらしい。
また、それ以上に、「 この旦那で我慢するしかなさそう 」 という感覚には、圧倒的な差異が存在するのだという。
ぺ・ヨンジュンは 「 ヨン様 」、ベッカムは 「 ベッカム様 」 と呼ばれる。
私なんぞは古い人間のせいか、人気者を 「 ○○様 」 と呼ぶ習慣を聞くと、「 杉様 ( 杉 良太郎 ) 」 を思い浮かべてしまう。
熱烈なファンが、対象に 「 様 」 の呼称を付けるのは、どうやら女性特有の現象のようで、男性が 「 あやや様 」 とか、「 ブリトニー様 」 とは言わない。
ちょっと不思議に思うのは、何年も 「 抱かれたい男ナンバーワン 」 の栄誉に連続して輝く 「 木村 拓哉 」 に、どうして 「 様 」 が付かないのかである。
私が知らないだけかもしれないが、「 キム様 」 とか、「 タク様 」 という呼称で、彼が呼ばれているという話は聞いたことが無い。
ぺ・ヨンジュンへの好感度について、周囲の老若男女に尋ねたところ、女性の中にも、あまり好ましく思っていない人はいるようだ。
サンプル対象が少ないので、あまり参考にならないかもしれないが、男性の中に 「 ぺ・ヨンジュンが好き 」 という人は皆無だった。
ちなみに私自身は、あまりよく知らないので、好きでも嫌いでもない。
好感度が低いという人に理由を尋ねると、男女ともに 「 ニヤついているから 」 という回答が多く、そう言われれば、そんな気もする。
彼の出ているワイドショーなどを眺めると、眩く白い歯をキラリとさせ、ファンに手を振る表情が、いつも 「 寸分違わぬ笑顔 」 であることにも気がつく。
ぺ・ヨンジュンだけではなく、続々と韓国のスター俳優が脚光を浴びており、いまや大人気となっているそうだ。
これはけして 「 悪口 」 でも 「 嫌味 」 でもないが、彼らのルックスや、ファンへの接し方の共通点を挙げると、「 ホストっぽい 」 という点のように感じる。
それも、どことなく古風で、「 昔の男前 」 的なホストである。
私の先入観かもしれないが、「 韓国人の男女感 」 というのは、儒教的思想に基づく、ちょっと 「 男尊女卑な印象 」 が強い。
しかし、当世の韓国スター俳優は、その甘いマスクと、優しげな眼差し、包容力を感じさせる笑顔を携えた、いわゆる 「 古風なホスト 」 タイプである。
また、これは偏見になるかもしれないが、彼らを熱烈に支持している女性は、どうやら 「 主婦層 」 に多いようだ。
当然、既婚男性の多くが、艶っぽい 「 おネエちゃんのいる酒場 」 に好んで通うのだから、主婦が 「 ホストっぽい男前 」 に憧れても、責められない。
それどころか、実際にホストクラブへ通うわけではないので、お金も掛からないし、はるかに実害の無い 「 健全な趣味 」 と言ってよいだろう。
だから、「 韓国人俳優なんぞに、うつつをぬかしおって 」 などと文句を言う旦那には、なんの遠慮も必要ない。
旦那の 「 飲み代 」 に匹敵する金額までは、好きな俳優の出演するDVDのソフトを購入したり、写真集を買っても、許される当然の権利である。
それに、彼らには 「 ホストっぽい 」 以外の共通点もある。
私の見る限り、彼らは端正な甘いマスクで目立たないが、かなり徹底して、その肉体を鍛えこんでいるように見受けられる。
日本のアイドルに多い 「 痩せっぽちで、ひ弱そう 」 な者はいない。
男性でも女性でも、「 既婚にも関わらず、他の異性に惹かれる 」 というのは、「 自分の伴侶に無い魅力を備えた異性の出現 」 が大きい。
日本の男性も、韓国のスターを毛嫌いするだけでなく、肉体と包容力を鍛えていかないと、「 ヨン様 」 に勝てる 「 旦那様 」 にはなれないようだ。
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