大変遅くなりましたが、自ブロックの感想いきます〜
D01 とある罪人の告白
穏やかな語りから始まる冒頭。祈堂という言葉から宗教めいたものを感じますが、戸籍のくだりから公務員的なものを感じました。
他の方もおっしゃっていましたが、こういう戸籍管理だと転出入の手続きが楽でいいなぁ……
朔は灯火の守人という仕事に誇りを持っていて、真面目に取り組んでいたのだと思います。でもその真面目さが仇になったというか、思いこみの正義って怖いですね。
純粋さは悪意よりも厄介で恐ろしい。濡れ衣を着せられた蝋燭の主が不憫でなりませぬ。
D02 顔(※注)
色香と怨念と狂気が入り混じった一作。女であることの情が悲劇をもたらしたとしか言いようがありませんね。
炎に包まれた舞台の上で微笑むお信の姿に、お信の顔を奪い格子窓に足をかける女の姿がシンクロして脳裏から離れません。
作者さまのあとがきをまだ読んでないので、詳細は分かりかねますが、「母娘の名乗りをあげるため」の一文から、女はお蓮の娘と考えていいのでしょうか?
最後突然現れた又吉に「今更何を言うんじゃー」とツッコミたくなったのも事実でございます。
D03 Gore -青き死神-
拙作です。この作品について、あとがきテンプレで書ききれなかった物語の詳細についてこちらで語っております。
D04 アマヤドリズム
Deathブロックの癒しと言われたこの作品。少年にお爺ちゃんに仕事疲れの女性。この三人の組み合わせは意外でしたがつかの間の演奏会に身震いが走りました。
音に乗せて声が重なるその瞬間にうぁあああ、と叫んでしまった位。文字を追っているはずなのに五線譜の音符を追いかけている気分でした。
あと、主人公の仕事ぶりに営業かじってた自分の過去が被りました。外回りの営業って雨風関係ないし、話ほとんど聞いてなかったりするし、辛いんですよ。もう……
D05 記憶
ミステリ色をにおわせながらじわじわと押し寄せるホラーがたまらない話。
悪気のない子どもの悪戯が取り返しのつかないことになっていた、というのは遺憾で、間が悪かったとしか言いようがないです。
少年の親にとっては許し難いことであり、割り切れない気持ちで居続けるのもまた辛いことかと。だから男は奈美に問いただしたかったのかもしれません。
でも、このラストだと男が詰め寄るまえに奈美死亡の気配が。死人に口なしとはまさにこういうこと。もやっとするラストが秀逸です。
D06 ひだね
童話調の冒頭から始まり、少年少女の命がけの冒険が語り継がれる童話へ――と思いきや不穏な空気を漂わせる展開にうわあああ、となりました。
平和になったことがそもそもの火種になってしまうのかぁ、と。この逆転の発想がすごいな、と思いました。
確かに、土地が豊かになることで、人のいざこざが増えて。これは童話だけの話ではない、人類の歴史で避けては通れない儀式のようにも思えてなりません。
その一方で欲に固執しない、等価交換を囁く魔女の存在が天上人のように見えてしまうんですよね。これがまた面白かったです。
D07 Waiting For The Fire Never Come
巷を騒がす某人気アニメの影響により、私、小鳥よりも巨大鳥よりも九尾の狐にキュンとしてしまいました(笑)
中盤、西部劇を彷彿とさせる描写の数々、荒野での銃vs魔法の展開は私にとってとても新鮮でドキドキしながら拝読。
敵ながらワイルド・パンチ強盗団がかっこいいですね。最後の「俺たちに明日なんかねぇよ。ワイルド・パンチ強盗団は今日しかねぇ」の台詞も素敵。
今回戦った相手が悪すぎますが、彼らの武勇伝を読みたくなりました。
D08 火童子
うわああぁ。森主が助かったのは良かったけど――「どうか、どうか」と願う童子の優しさが、自己犠牲がせつなくてせつなくて。
火事のあとで、火童子のことを知った森主のことを考えるとこちらの胸がはりさけそうになります。童子にとって森主は友達であり、家族のような存在になっていたのだろうなぁ。
あと、死んだ樹をばくばくと食べている姿が「ひとではないもの」をより印象づけていていたと思います。読んだ後も私の脳裏にはそのビジョンが離れませんでした。
D09 焦げた着物の少女
最終的にお紺ちゃんよかったね〜という安堵なんですが、物騒なタイトルに吉信の癖のあるキャラ、意味深な台詞に終始びくびくしながら読んでました。
よく見たら藤一郎と吉信、ふたりの名の一文字を取ったら藤吉なんですね。これって藤吉という男の魂が二分してそれぞれに転生したってことなのかな?
こういった前世が絡んでくるお話、大好物です。できることなら藤吉とお紺ちゃんのもっと優しい思い出とか、奥さんとのほのぼの話ももっと見たかったです。
D10 灼かれた者(※注)
物語の中で繰り返される「業火」の単語。
冒頭のぎらぎらとした復讐心、中盤は沸々と湧いてくる恨み、終盤真実を知ったことに対する悲しみと後悔。それぞれの場面で違う感情を示しているのが面白かったです。
そして弟の本心を知った時の逸香の衝撃は……私もえええっ、と叫んでしまった位です。このひっくり返しにはやられたーっ。
他の作品にも触れましたが、子どもの何気ない言動が相手をひどく傷つけたり、取り返しのつかないことになるというのがやるせない。
D11 葬送
冒頭の「振り込め詐欺」的な会話が面白かったです。おばあちゃんかっこいい。波乱万丈とはまさにこのこと。でも実際にこういった話はあるかもしれないと思いつつ……
彼女から語る「内縁の妻」の人生に女の忍耐と母の強さを感じました。そして男の弱さと狡さ(と書くと語弊があるかもしれませんが)が更に彼女の魅力を引き立てていたのかもしれません。
途中から出てきた本妻の息子を最初気の毒に思いましたが、彼もまた、逞しく生きてきた一人で、最後和解に至ったようなのでよかったです。
きっと主人公の第3人生は明るく楽しいものになりそうですね。素敵なお話でした。
D12 業火
今回Dブロックは「語り」の話が多いです。でも語り手の口調で物語の雰囲気ががらりと変わっていくのがとても興味深かったです。
この話の主人公は口は悪いけど影のある女性。彼女は優しかった姉さんや「あの人」の生きざまに巻き込まれてしまったことで地獄を見てしまったのかもしれません。
それでもなお、彼女が生きていることに救いを感じました。業火に焼かれてもなお、生きて生かされている、それが希望のようにも感じます。
彼女の店にやってきた客はもしかして――彼女が語る「あの人」なのでしょうかね?