正解発表後ですが、Eブロックの感想です。
E01 生きてさえいれば
繰り返されるような文章に最初「あれ?」ってなったのですが、二度読んでみてわかった。
――から始まる段落のみを繋げて読むと、救いのある結末(父の同人誌)。
――なし段落だけを繋げたのが主人公にとっての現実なのですね。
お父さんは次女の引きこもりをネタにしてたってことなんだろうか……
とにもかくも、お姉ちゃんの死に様がとても強烈に残った作品でした。
E02 キドニーパイをひとくち
とても洗練された文章で言葉選びも完璧で……好きですっ!
料理の描写を読むだけで想像がぱあっと広がって、満腹だったはずなのに、食べたいなぁと思わせる飯テロ小説。
そして厨房の中の社会は現代社会の構図と変わらず……部下に悩む上司の姿が非常にリアルだった。
それにしてもキドニーパイを食べてみたい……
E03 火を目指して飛んでいけ
方言で綴られていたこと、ついったーの情報からして福井県の可能性高い? 方言で二人の女の子があれやこれやとお話する姿が新鮮で、ああ、なんて可愛いらしいんだろうと思いました。
主人公のもやもやに私も思わず同意したりして、思春期の心の揺らぎを存分に楽しませていただきました♪
あと折り鶴に「あほ」と書く場面。もしかして作者様は関西在住? (関東は「ばか」と書く人が多い気がするので)と推理してました。
E04 酔夢春秋
むかしむかし、という語りから始まるお伽噺のような雰囲気。
童子の動きひとつひとつに風を感じました。特にちさを助けた瞬間に感じた風邪が一番熱い。序盤にあった動物たちとの音楽会も楽しそうですね。
天狗だけど、鴉の名前をわざと忘れたりする姿がちょっとせつない。ふとした行動が人間っぽくてより親しみを覚えました。
E05 グラスキャンドルライト
そういえばG08クリスマスに振られた話あったなぁ、と思いつつ、こちらは救いのあるお話ですね。
タク君、別れを告げるタイミングが悪すぎたな〜 ひなちゃんの言うとおり、何でこのタイミングなんだろうな、っていう。
でもタク君は自分の立場と不器用さを分かっていたんでしょうね。正直、歌の場面は聴いているこっちも恥ずかしくなってきましたよ〜
タク君から電話がこなくても、ひなちゃんが過去のトラウマから解放され、新たな一歩を踏み出せることを祈ります。
E06 ことのはに
「ことのはに」というタイトルが素敵。ひらがなの柔らかさにほっこり。そしておかみさんの言葉がとても的を得ていて色々考えさせられました。
私も臆病風を吹かせたり、緊張して言葉足らずになったりすることが多いので、大切な人の前ではしっかり火を通した言葉を伝えたいと思います。
E02を読んだのが夕食を済ませた直後、そして日付変更前にこの話を読んで腹が鳴りそうになり、唾が出て……なんちゅう飯テロorz
鯖の味噌煮大好きなだけに、おあずけ食らってしょぼーんでございます。
E07 暁の女神と黄金の悪魔(※注)
王子と皇女の純粋さが狂気となり凶器となった作品。世界観がしっかりしていて壮大。両国の陰謀が絡んだことで、少年少女の愛が引き裂かれた悲しい話。
敵同士となった二人が戦場の片隅で再会してからどきどきが止まりませんでした。生きるか死ぬかの瀬戸際で二人を繋ぐのはひとえに愛としか言いようがない。
そして愛を貫くために国をも滅ぼす結末に脳内が真っ白になりました。
E08 女神は灰の夢を見る?
S女史の色香にこちらもくらぁり。カッコいいキャリアウーマンなんだろうな、と想像しつつ、彼女の胸の穴が非常に気になりました。
穴があいてたら水着も着れないし、友達と旅行や温泉とか行けなさそう。あ、でも露天風呂付きのお部屋でのんびりくつろいでいるかもしれない。
彼女の私生活がとてもとても気になりました。
これはファンタジーなんだろうけど、ちょっとホラーっぽい。生き延びた弟君がその後どうなってるのかも知りたいですね。
E09 The Phantom Circus, Fire Funeral
最初、アーロンがライオンに噛まれた? これバッドエンド? いやいや実はドッキリで……ってやっぱり死んでるじゃん!
二転三転のひっくり返しにこっちもびびりました。何度も読み返し、物語を咀嚼しました。
死を目前とした老人に映し出されたのは憧れのサーカスの舞台。彼はその時を迎えることでサーカスに留まり、夢を叶えることができたと言ってもいいのでしょうか。
孫にチケットを遺すという粋な演出もよかったです。
E10 朱樂院家の焼失
おとぎ話を王子様視点から見たようなお話。めでたしめでたしで締めくくられたけど、何かが引っかかる感じがするのは気のせいでしょうか。
蓉子と叔母が明らかに悪役となっているが、果たしてそうなのかな? 双子の母親が何故本家に瞳子を置き、蓉子の手を引いたのかが引っかかります。
臆測に過ぎないですが、母親は本家に瞳子を残し、蓉子と心中を図ろうとしていたのではないか?
もしそうだとしたら蓉子の行動にも納得がいくし腑に落ちる。叔母は子がないことで、理弌との仲も冷え切っていたっぽい。なら蓉子を溺愛することでその寂しさを埋めていた?
そして見方によっては瞳子の方が策士なのではという思いもなきにしもあらず。そうなると理弌は完全に掌の上で転がされていたことになるんですが(汗
長々と語ってしまいましたが、このお話は視点を変えれば奥深く、また違った展開を見せるのではと思いました。
E11 種火
新撰組近藤さん視点での「池田屋騒動」ですね。まずはじめに、どっしりと構えた近藤さんの姿が浮かびます。聡明で威厳に満ちているさまは頼もしい。
そしてちらほらと出てくる局員の名前に心が躍ったのは言うまでもない。「風光る」を読んでいる私としては斉藤さんがイチ推しなんですが……
ひとつの事件が種人なって、結果として混乱に陥れてしまうというのが無情としか言いようがありません。
E12 プロメテウスの崖
水に浸された町のシーンが強烈に残ります。読んでいる間も脳裏に水が押し寄せて思い出の品々が彼方へ吸い込まれていくさまが幻想的に映っておりました。
「特別失踪」扱いにされた両親が実は生きているのでは、と願う気持ちがとても胸に響きます。根拠や現物がないのに法によって生と死を区切られてしまうのは腑に落ちないですから。
ただ、一人ぼっちになってしまった唯の寂しさが淡々とした文章の中で切々と伝わって、戦闘機関係詳しくないのですがすっかり物語の世界にはまっていた自分に気が付きました。