鎌倉の実家へ帰ってきた。 いつも通り、やさしく迎えてくれた両親。
そして、芳醇な空気、緑の山、穏やかな海。 江ノ島海岸は、ほとんど湖のように静かで 海の家の建設が少しだけ始まっていた。
30年前と同じ海岸線を走る。足が砂に埋もれる。 だが、波打ち際を走ればコンクリートの上を走るより ずっと楽に、膝にも負担無く走れる。
あんなに広く感じた海岸線も大人になったら少し 小さく感じた。走る、走る。まるでロッキーの ように全速力で走った。いつ以来だろうか全速力。
海岸から実家までとぼとぼと歩いて帰った。 それは中学時代の通学路と同じ道で帰った。 あまりにも何も変わっていない。中学の校舎。 買い食いをしたパン屋。川沿いの細い道。
あのころの仲間がすぐそこにいるような錯覚に 襲われた。あまりに鮮烈に思い出の場所があるのは 嬉しい反面、ほろ苦い。もう戻れないという悲しさ のせいかもしれない。
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