かなしいうわさ
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2005年05月30日(月) 439

石塚真一 /岳(ガク)
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久しぶりに王道マンガで面白いものが出てきたなぁ。「美味しんぼ」とか「マスターキートン」のような、ベタベタに昭和なストーリー。なのに古びた感じが全くしない。新しいことは何もないけど、登山という語りつくされたようで興味のない人には縁のないものを、愛情たっぷりに、だけどひけらかしや嫌らしさを感じさせずひしひしと伝える丁寧な描写が普遍的な素晴らしさを持っているからだろう。 主人公は山に住み、ボランティアで救難活動をしている男なのだけど、こいつがまた本当に気のいい奴でね。遭難者にかける言葉もそっけないくせにじーんと来る。誰もおきざりにしないんだ。遭難者だけじゃなくて、慣れない登山の話にオタオタしている読み手も一緒にやさしく連れて行ってくれるんだ。いい奴だなぁ。
緻密でダイナミックに描かれる山や人物の描写も素晴らしい。


俺の両親は若い頃登山家だったらしい。家の建て直しのときに倉庫の奥からクラシックな登山セットが二組出てきたときに「え、何これ?」と尋ねてはじめて知った。二人のなれそめも山でふと出会って...とかそんなんだって。ロマンチックじゃないの。そんな両親にこの本を送ってみようと思う。マンガなんて全然読まないけれどきっと気に入ってくれる筈。
そして登山なんてちっとも興味ないというあなたにもビンビン伝わるんじゃないか。凄いマンガってそういうものだ。







■今日の一枚
four tet /everythins ecstatic
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待望の新作。俺いわゆるエレクトロニカ的なアーティストでずっと好きなのってこの人くらいなんだ。 お? お? なんかロックしてるな。パシっとしてて小気味良く、音の触感も絶妙にスマート。上モノの音色は相変わらずほわりとやさしい。いいねいいね。気に入ってよく聴いている。
でも、ロックっぽくないのにエレクトロニカのクリシェにはまらず絶妙の場所でゆらゆらと漂っていた前作「rounds」よりもすぐ飽きる予感も... 態度保留としておくかな。

レイ・ハラカミの新譜を好きな方は、この人がやっているFridgeという別名義ユニットのアルバム「happiness」をぜひ聴いてみて欲しい。これは時を経ても色褪せることのないド名盤。







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