失うこと。




「なんかさぁ、戻った感じするね」

最近また毎日のように一緒にいるさくちゃんが

ぽつり、隣でつぶやいたのが聞こえた。


前の冬もこうやってよく夜中にドライブしてたよね。
覚えてるよ、彼とまだ出会う前だ。
さくちゃんが2年近く付き合ってた彼氏さんとお別れした頃。

こうやってお互いいろんなこと話したね。




うん、

なんか戻ってきたみたいだ。




「ほんとはさ、あんなままで終わるなんて、
 あれで終わらせるなんて、あたしはおもってなかったんだ」

誰ひとりにも言えなかったこと。


「よかったんじゃない、終わらせて」

さくちゃんが言ったのは、1ヶ月前にみた彼と女の人のこと。

・・・そっか。
そうだね。そうだった。あたしまた忘れちゃうとこだった。
邪魔しちゃうとこだった。彼の人生を。

クリスマスくらいなら許されるかな、なんて。
勝手に考えてたんだ。




だってだってわかんないんだもん。


あたしが悪かったのはわかってる。でもわかんない。
どうしてちゃんとぶつかれなかったの?
あたしのせいなの?どうしてればこうならなかったの?
どうしてればあのとき抱きしめてくれたの?

必死にバランスとろうとした。

かつてないくらい、愛されたいと願った。




ねぇどこまでがほんとだったの?


どこからが嘘だったの?


いつから誤魔化してたの?


それともほんとは最初からなかったの?



こんなこと言うなんて酷い。

親に言ったのも、友達に紹介したのも、はじめてだったんだ。

深くなりたいとおもってた。
なにもかも、溶け合うみたいに混ざり合うみたいに、
深く深く繋がるそんなふたりになりたいっておもってた。

いちばん必要だったのは時間だったのかな。彼の言ってたように。

きっとあたしにとっては、出逢うのが早すぎたのね。
ふたりして、恋におちるのが早すぎたのね。


今更こんなことばっかりおもうなんて、本気でどうかしてる。


付き合ったりしなければよかったのかな。

なんてね、おもうんだ。
後悔してるわけなんかじゃないんだよ。
いちばん傍で過ごせた日々はかけがえのないちぃの宝物。

だけど、こんなことになるんだったら、って。
だってほんとに彼の支えになりたかった。
信じることの苦手な彼に、信じてもらえる人でいたかった。
彼の力になりたかった。頼れる人になりたかった。

ひとりじゃないんだよ、ってあたしが証明したかった。

愛や恋に必ず終わりがくるのなら、
あたしはずっといつまでも終わりのない関係でいたかった。

結局あたしは、彼の不信を煽るようなことしか出来なかったんだ。


いつかきっとあたしはまた誰かを好きになるでしょう。

それでも、もう彼へ抱いたような強烈なまでの想いや感情や、
能天気ともおもえるほどに純粋な気持ちは二度と持てないでしょう。
あれほど真っ直ぐに誰かの胸に飛びこむことは出来ないでしょう。

怖くて仕方ないよ。
2006年11月06日(月)

魔法がとけるまで。 / ちぃ。

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