さよならはすぐそこまで。


哀しみのなかにただ身を沈めてしまうのは、とても楽だけれど。
そうじゃなくて、その哀しみすら愛しく想えるように、
そんなふうになにもかもを大切にしていきたいって、今すごく思う。

新しいものを手にする喜びも、彼の言葉を考えることも、
耳をすりぬける音のなかから声を少しでも探してみることも、
考えすぎて苛立ったり、不安になったり安心したりすることさえ
もうこれ以上は、もうこれから先は、ないんだね。

実感、かなぁ。なんとなく。

卒業後にも関わらずお仕事を依頼していただいたのに、断っちゃった。
失礼きわまりないね。せっかく信頼してくださってるのに。

なんだかね、もうあの人のいないところに魅力を感じられない。
めんどくさいことでしかない。夢も見られない。
そんな状態で、お仕事受けられるわけなんてないよね。
お断りしたのには申し訳なかったけれど……。

でも、やっぱりまだ痛いよ。抉り出されるのはやだよ。
余計なことなんて考えたくなくて、彼のことだけ考えていたくて。
本当にもう、なにも入る隙間なんかないんだ。

最期の日までは穏やかにいたい。
彼の前で崩れることなく、笑って見送るんだ。だから。

大丈夫。まだあたしは大丈夫。

こうやって、哀しみも痛みも綴り続けて、涙を流し続けて、
それでも少しだけ前に進むんだ。あたしひとりでも。


愛しいなぁ。彼だけ。


顔に似合わず低い声も、すぐ表情に出ちゃうとこも、ゆるい口調、
目つきの悪い真っ黒な瞳、平均よりも随分と低い背だって。
友達の結婚式で思わず泣いちゃうようなとことか、弱虫なとこ、
丸くて下手な字、漢字書けないとこ、生意気なとこ、自分勝手なとこ、
あんまり明るくない性格も、排他的な性格だって、愛しい。

彼を成す、すべての要素を愛しいと思えるんだ。

もうすぐ彼に会えるんだから、哀しいはずなんてないよね。
ちゃんと笑わなくちゃ。暗い顔でなんて会いたくないもんね。
彼がつられて笑っちゃうよーな笑顔、できるといいな。
2005年03月24日(木)

魔法がとけるまで。 / ちぃ。

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