松ぼっくり |
2002年03月20日(水) |
電車の中で松ぼっくりを拾った。
前に座っていた女性が立上がった拍子に、ころんと床に転がり落ちた。 その駅は終点だった。 私も降りようとしていた。 が、床の松ぼっくりから目が離せなかった。 女性は何も気付く様子もなく、行ってしまった。 人が大方降りたのを見計らって、私はそれをパーカーのお腹のポケットにしまいこんだ。
ポケットの中で松ぼっくりを握り締めながら街を行く。 耳には、いつものお気に入りの音楽。 キレイに開いた松かさは、私の手の平に適度な刺激を与え続けた。 そう。それは本当に丁度良かった。 大きさも、その刺激も。
この人込みの街の中で、私は他の人よりも何か素敵なものを手に入れたような気になっていた。
そんな気分で2枚CDを買った。 くるりの『THE WORLD IS MINE』 MAMALAID RAGの『春雨道中』 先月に引き続き、ちょっと贅沢な気分。 この2作品の感想は、また後日。
松ぼっくりを握っている時の私は、ある小説のことを思い出していた。 その主人公は、松かさではなくて、ある果実によって同じような気持ちを抱いたわけだけれど。 ふと、その小説の結末と同じことをしてみようかという衝動に駆られたけれど、勿体ないからやめた。
松ぼっくりは今も机の上。
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