謎は解いてもいけないし



「夜の散歩」

2003年11月08日(土)

「散歩に行かないかい、石岡君」
 もう暗闇に近い夕暮れ時に御手洗は誘ってきた。
「…うん」 
 誘われるままにぼくは御手洗に付いていった。なんとなく塞いだ気分だったのだ。
 どこをどう歩いているものか、御手洗は路地を上手く抜けて歩いていて、方向は港のほうだとは解ったが、歩く道筋はぼくには皆目見当がつかなかった。
 夜の、人通りから離れた道は、枯れ葉がそこここで風に舞って、足元で乾いた音を立てる。空にはぼやけた赤い月が丸く昇っている。御手洗はひとり背中をみせて先を歩き、ぼくはなんだか暗闇が怖くて足早に後を追い彼の手に縋った。人の姿のまったく見えない静かな道を、ぼくたちは無言で手をつないで歩き続けた。
 どのくらい歩いたのもか、いきなり道は開けた。埠頭の前に出たのだ。
 夜の海は暗い。何も見えない。埠頭のまわりのほの明るい灯火が沈みかけた気分に追い打ちをかけた。
 いろいろなものがうまくいかない。
 どれがとか、なにがとか、決めつけるわけではないが。
 寄せて返す海のかおりが、そういうぼんやりとした気分にまとわりついた。
 ぼくたちはただ黙ってフェンスにもたれて海を見ていた。
 どのくらいふたりでそうしていたのだろうか。
 いきなりぼくは御手洗の視線を感じた。 
 そのあとふいと手が延びてきて、ぼくの髪を梳いた。
 ぼくが驚いて彼を見つめると、自分の思考に囚われていたふうな御手洗は穏やかにぼくを見ていた。
「……なに?」
「そんなに暗くなるもんじゃないよ、たかだかコミケに落ちたくらいで」
 にやりと笑われた。
「………っ」
「他にやることはいろいろあるだろう? いろんな方法が」
「だって、今だってもう、落ち目だって言われてるんだ! くやしくないのか? なんだかやる前から否定されたみたいじゃないか! ぼくは今回だけは出たかったんだ!」
「考えようだろ、石岡君。ぼくはどこにもいかないし、別な言い方をすればどこにでもいるんだ。なぜコミケじゃなくちゃいけない?」
「………まさか、きみが手をまわして……まさか、自分が取り上げられるのがいやで………」
「冷静になりたまえ、きみ」
「うーん。なんだか、きみのせいのような気がしてきた…」
「ともかく、決まってしまったことはしかたがないじゃないか。ただ落ち込むより、そのエネルギーをなにかに使った方が得策というもんだぜ、きみ」
「………一応、慰めてるのか? それ」
「ぼくが慰める必要はない。ただ道はいろいろあると言ってるだけさ。今日の道もきみは知らなかっただろう?」
「……いろいろな、道……」
 しばらくぼくは考え込んだ。御手洗はそのあとなにも言ってこなかった。
 充分、海の風に嬲られたあと、ぼくはひとつため息をついた。
 御手洗の言うとおりだ。解っている。解ってはいたさ。
「御手洗」
 声を掛けると、彼はもう一度ぼくの髪を梳き、それをくしゃくしゃにした。
「子供じゃないぞ」
「じゃあ、アパートに帰ったらそれを証明してもらおうか」
 一瞬考えて、ぼくは赤面した。
 くるりを踵を返すと御手洗の笑い声を聞く前にさっさとその場を離れた。


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で、石岡君、そんなに早くアパートに帰りたかったんかい、という突っ込みもしてみたりしてさ(笑)

冬コミ落ちました。
いや、そうですね、実はいろいろ下準備はしていたんですよ。
いくつか載せたい作品のピックアップと編集準備と構成など(笑)
今回は表紙はカラーで、ちょっと薄いけれども「綺麗な本」というのを目指していましてね、どちらかというと、センスのいい(私比)A5サイズ本を創ろうと思っていたんですよ。
御手洗同人誌は昨年の傾向を鑑みるに、コミケくらい大手のイベントでないと捌けないんで、やはり参加できないとなると創れません(笑)
なのでごく少数のご期待くださったかたには申し訳ありません。
できないな(笑)
とりあえずは、1127BDに力をいれます。
あとはオリジナルですね。
それを続けていればいつかは御手洗本も出せるだろう、という本末転倒(笑)
ま、好きなことはなにやっても続きますから。
御手洗。わたしにオリジナルを描く気持ちを残してくれてありがとう。
そして、背中を押して御手洗を続けさせてくださったみなさんもありがとう。
いつか、誰かが言っていたけど(笑)
「まーだやってるんだ、この御手洗サイト」というぐあいになるんじゃないかと思う具合に続いていくでしょう。めいび(笑)







  






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sachi [MAIL]