Seakの日記
日々感じたことを書き留めていこうと思っています。

2003年05月21日(水) ナースキャップ

2003.05.21 (Wed) 19:57:15

とりあえずは本題から外れた話から。分かりやすく説明する技術とかいう本を読んだ。いちいちもっともで、なるほどと思わされる。それを適用すればこの日記ももう少し読みやすくなるかな、と思ったが、考えてみれば、そもそも毎日の日記で主張したいことというのがはっきりしない。はっきりしている日もあるが、日記なので、その日のことをそのまま書くことが多い。ほとんど備忘録に近い。出来事にしても、何らかの考えにしても。

…ああ、その本についてまとめようかと思ったが、そういう気分ではない。それよりも、一大事件についてなるべく詳細に書こうと思う。

僕が起きたのは12時頃。昨日は遅くまでゲームをしていたのだ。なんせ講義が5時限しかないから…。だからってこんな時間に起きるのはどうかと思うが。布団に潜っているときに玄関のチャイムの音が聞こえた。どうせ何かの勧誘だと思っていたが、どうも母の声に拒否するような勢いを感じない。なんだろう、と思っていたが、そのまましばらく布団に潜っていた。

それからしばらくして、布団から這い出し、布団を片づけて、着替えた。僕がいつも寝ているのは2階なので、そこから1階に下りていった。13段の階段。今では気にならなくなったが、昔はこの13段の階段というのがなんだか気味が悪くて、1段とばしに登ったりしたものだ。13段の階段を1段とばしに上っていくと、最後に端数が出て、結局7歩で登ることになる。13という数字が7という数字になるのがなんだか嬉しかった。そんな小学生の頃の感覚がいまだに残っていて、今でも階段は一段とばしに登ることが多い。で、その階段を下りていった。下りるときは普通に1歩ずつ下りている。

階段を下りてアコーデオンカーテンを開けると、そこには赤い箱があった。そこで僕はピーンときた。「これは、例のブツでは!?」と。だが、それにしてはその貼ってあるシールがよく分からない。なぜか、「ガラス、ビン、セトモノ」と貼ってあったのだ。もしそれが僕の想像通りのものなら、割れ物であるはずがない。

「これはいったいなんだ?」と思い、僕はその箱の貼付票を見た。僕に宛てた箱だ。僕の家の住所には「淵」という字が含まれる。これが正しい字なのだが、僕は普段、この字が書きづらいので、「渕」という字を使っている。しかし、たまたまこの例のブツの宛先として住所を書いたときは、面倒くさくて変換を直さなかったのだ。…ごめんなさい。

差出人は間違いなくあの人だ。品名は…。こ、これは…。そこには、「趣味の頑具」と記載されていた。本当は「玩具」と書くが、そんなことはどうでもいい。なんだ、この誤解を招きかねない品名は!!…あらかじめ家族に言っておいて良かった。この時点ですでに、こみ上げる笑いをこらえきれずに、「ふふふ…」と声を出していた。台所にいた母は、さぞかし気味が悪かったことだろう。

僕はその怪しい赤い箱を抱え、ソファーに座り込んだ。箱は丁寧にビニールで包まれていて、セロハンテープできっちり留められていた。丁寧なのは非常に嬉しかったのだが、…あ、開かない…。しばらくがんばってセロハンテープに爪を引っかけたりしていたが、セロハンテープの破片が取れるだけでどうにもならない。僕はその箱に対して非常な怒りを覚え(アホだ)、セロハンテープが少しだけはがれたその隙間に指をつっこむと、全力をもって引き裂いた!(ごめんなさい)

箱を見た段階から実に4つの段落を経て、ついに、箱を開けるときが来た。僕の胸は最高潮に高鳴り、運命の時を一刻も早く迎えるべく、箱を開いた。

「を、をををっ!!」

そこに現れたのは、カバーだった。黄色い化学ぞうきんのような(失礼)物体に包まれ、それはあった。僕は神秘のヴェールを奪い取るように、そのカバーを取り外した。カバーはシールで留めてあった。"especially for you"…。"especially"という単語には辞書へのリンクを貼ってあるので、見てみるといいと思う。英語のできない僕にその単語の意味が分かるはずもなかった。

カバーの中から、ついにそれは現れた。老若男女、誰もが一度は夢見る幻の品(本当か?)、ナースキャップだ。ナースキャップ、あえて英語で言えば(言うな)nurse cap、日本語で言えば看護帽だ。僕は高鳴る胸の鼓動を必死に抑え、こみ上げる笑いもついでに抑え、そのナースキャップを手に取った。持った瞬間分かった。こりゃ確かに、割れ物だ、と。

ナースキャップのあの形は、全体をノリでバリバリに固めることで維持されているようだ。確かに、普通の布がこんな形になったら怖い。箱の中には、丁寧な包み以外にも、緩衝材がたくさん入れてあった。…これ、いくらかかったんですか?申し訳ない気持ちでいっぱいになりながらも、僕はさっそく、そのナースキャップを見定め、前と後ろを確認して頭の上に載せた!

…コトン。

ナースキャップは、間抜けな音を立てて、あっさりと床の上に転がった。なんぢゃこりゃぁ!!僕はその理不尽な構造に、目がくらむ思いだった。明らかに上部が大きいアンバランスな構造。そもそも、小さすぎて頭にはまるようなものではない。本当に頭の上に載せるしかない。僕は何度が悪あがきを繰り返したが、とてもじゃないがそんなアンバランスな代物を頭の上に乗せ続けることなどできなかった。確かに僕は、常人よりも頭が大きい。きっと脳容積が多くて頭がよいのだろう。…だが、頭が大きいとかそういう代物ではないのだ。そもそも、構造上、人の頭の上に載せるのは不可能なのだ。

僕は、箱をさらに詳細に調べた。おっ、メッセージカードだ。なんかやたらハートマークが描いてあるが、きっと意味はあるまい。メッセージカードには、普段僕が使っているペンと同じ色でメッセージが…。じ〜〜ん。結構感動。…しかし、感動していても、ナースキャップをかぶれないという事態は解決しない!僕はさらに箱の中を見た。そこには…。

ヘアピン。

な〜るほどね、ピンで留めるのね。そりゃそ〜だよなぁ。だが、そこで深刻なことに気がついた。ナースキャップをかぶるということはつまり、自分の髪の毛とナースキャップをヘアピンで連結することを意味するのだ、と!笑いながらちょっと載せてみるくらいならともかく、ヘアピンなんて使ったこともないのに、それを僕に使えと言うのか!しらふのまま、ナースキャップと自分の髪の毛を連結する作業をせよと言うのか!

僕は、ナースキャップを目の前に置いて、じっくりと考えた。よく考えろ。男として、それをやるべきなのか!?それはちょっとばかり道を踏み外してはいないか?

だが、さらに考えた。そもそも、ナースキャップを欲しがった時点でちょっとずれてるんじゃないのか?もはや、かぶろうがかぶるまいが、たいした問題じゃないのではないか?

よし!僕は、おもむろにヘアピンを手に取った。…あっ。外れない。ヘアピンを台紙から外す方法が分からん。妙に流れるような筆記体で、ヘアピンの台紙には"Hair Accessory"と記されている。その文字が、なんだか僕をバカにしているような気がした。意地でも外してやるぞ、ヘアピンめ!だが、にらめっこしても分からないものは分からない。だがそこに、コペルニクス的転回が訪れた!押して外れないものは引けばいいんだ!そして僕は、ヘアピンを台紙から引き抜いた。

いよいよ運命の時、戴冠の時だ。僕はナースキャップにヘアピンをセットし、それを髪の毛に引っかけた!…ずるっ。だが、その努力もむなしく、ナースキャップは無情にも僕の頭から転げ落ちた。へ、ヘアピンってどーやって使うんだぁ〜〜!?

僕は悲嘆に暮れながら思った。やはり僕は、ナースキャップをかぶるべき人間ではないのだと。こんな機会だったので少しナースキャップについて調べてみたのだが、本来ナースキャップは、看護職としての適正があると認められた者だけが、かぶることを許されるらしい。そのための儀式として戴帽式というのがあるそうだ。僕はまったく知らなかったが、ナースキャップを与えられ、ナイチンゲールのランプが由来とされるろうそくを持ち、その志を継ぐ者として看護の職に就くことを誓う儀式のようだ。

このナースキャップはもっぱら象徴としての意味を持ち、衛生面では特に意味がないどころか、むしろマイナスになる部分も大きいらしい。清潔感を与えるものではあるのだが、その実態は清潔なんてものではなく、最悪、雑菌が繁殖することもあり得るらしい。と言うのも、さっきも上で述べたように、これはノリでバリバリに固めているので、そのノリがエサになって雑菌の繁殖を促してしまうらしいのだ。また、同様の理由でそんなにいつも洗えるものでもなく、白衣と比較すると、あまりきれいとは言えない状況らしいのだ。

というわけで、廃止の動きが進んでいる。僕がこうしてナースキャップを手にしたのも、そういう動きの影響なのだ。世の中がなんでも合理的になって悲しいと見るべきか、不衛生なのであれば当たり前だと言うべきか。ちなみに、衛生面の問題だけでなく、引っかかって邪魔だとか、問題は他にもいろいろあるらしい。おもしろいものでは、ヘアピンのせいではげる、などという意見もあった。

ナースキャップ…。これ1つ取ってみても、その背景には実に様々なものが見えるものだ。少し、世の中の広さというのを思い知った気がする。

2003.05.21 (Wed) 21:24:34


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