Seakの日記
日々感じたことを書き留めていこうと思っています。

2003年04月16日(水) 冷酷な周期

2003.04.16 (Wed) 19:08:49

もう、君は必要ないはずだ。僕は新たな道を歩まねばならない。もう、消えてくれ。

深呼吸すれば、冷静に考えられるはずだ。今の世の中、ここで立ち止まっている余裕などないのだ。血反吐を吐いてでも進まねばならない。ましてや今、僕の歩みを止めるものなど何もない。

忘れられるはずだ。このまま日々を過ごせばいずれ消える存在。ならば今、僕の心から消してしまわなければ。

…憂鬱な顔をしていたと思う。こんなことを考えながら帰りの電車に乗っていた。今日は割といい日だったが、それでこの憂鬱が消えるわけではない。だが今日は、朝にチキンラーメンを食べただけで、他に固形物は口にしていなかった。くだらない思考は食欲に屈し、僕は、東京駅京葉線ホームのキヨスクでチョコレートのバーを買った。

キヨスクを出たとき、なぜか、彼女がそこにいた。別に、僕に会うためにいたのではないんだから、なぜか、という言い方はおかしいが。このときは珍しく、彼女の方が先に気づいていたようだ。彼女を見た瞬間に、うだうだと考えていたことはすべて、巨大質量のハンマーで吹き飛ばされたかのように消し飛んだ。深呼吸も何もない。理性まで一緒にすっ飛んだような気分だった。「どうしたの?」と声をかける。電車から降りてそのチョコレートのバーを買うまで、1分以上経っていたはずだ。そうしたら何のことはない。彼女はこれから大学へ行くところだったらしい。就職活動をさんざんやってから研究室とは、彼女も大変だ…。

すぐに行こうと思ったが、立ち去る一歩が踏み出せなかった。結果、電車が出る直前まで、彼女を引き留めることになってしまった。乗り遅れなかったのだから別にいいとは思うのだが。…しかし、うっとうしいとは思っただろうな。まさか東京駅なんかで、僕と会うとは思っていなかったに違いない。いったい何を話したのだろう。彼女を見た瞬間から、彼女のところを立ち去るまでの間の記憶が曖昧だ。いつになったら、彼女と冷静に話せるようになるのだろう。ただ、彼女はかなり小さい声で話していた。これは、電話の経験から類推すると、僕の声が大きすぎた可能性が高い。大きな声で話されると、小さい声で返す傾向がかなり多く見られるのだ。ま、あくまで僕の経験であり、一般に言えることではないかもしれないが。

にしても、彼女がずいぶんきれいになっていると思った。しばらく会わないうちに、彼女は僕の中でどんどん神格化されて行ってしまったのだろうか。それとも彼女には誰か好きな人でもいるのか。恋の魔法できれいになったんじゃないだろうな…。と、思ったが、もう少し落ち着いて考えればそんなはずはない。僕の目から見て彼女がきれいになったように見える原因としては、僕の心理的なことも考えられるが、いくらなんでもそれで大きく違って見えるはずはない。自分の視力が落ちたのかとも思ったが、僕の視力は昔から悪いので、今になってそんなにおかしくなるはずはない。まあ、単純に考えて、就職活動のために化粧をしているとするのがもっとも妥当だろう。…人は、変わるものだ。他の人が化粧をしていても何とも思わないが、彼女の姿は、まるで別人のように見えた。元々化粧っ気のない人だったからかもしれない。

いつもの僕だったら、そのホームに残って彼女の姿をずっと見ていたかもしれないが、さすがに今回は、引き留めてしまったのが気まずくて、さっさとその場から歩き出した。僕はおなかが空いていると落ち着かなくなるので、それもあったかもしれない。それまで憂鬱だとうだうだ考えていたのが、まるでなかったかのように気分がすっきりしていた。ただ、ほんの少しの立ち話しかできなかったことが悲しくて、それほど楽しい気分でもなかったのだが。

なぜ彼女は、こんな絶妙なタイミングで現れるのだろう?単なる偶然に決まっているが、それでも、忘れようと思ったときに限って現れる。もう吹っ切れようとすると、フッと現れるのだ。彼女にしてみれば普通に生活しているだけだろうが、それでも、こんなふうに会ったりすると、なんだか妙な運命のようなものを感じる。だからと言って、それで彼女と運命的なつながりがあるとか言うほど、僕は楽天的な性格ではないが。プラス思考を心がけてはいるが、そんな都合のいい話はないだろう。…などと考えるそばで、実は彼女は、僕に会うために必死にタイミングを計っていたんじゃないかとか、わけの分からない妄想を抱く自分がいるのだが。

彼女は研究室に行くと言っていた。講義の時に彼女と同じ研究室の友人が、これから仕事があると言っていた。おそらくは研究室に行ったのだろう。彼らの研究室は、みんな毎日のように集まっているそうだ。2週間に1回くらいしか集まることのない僕のところとはずいぶん違うとは思うが、それはそれとして、何の苦労もなく彼女に会えるその友人が、うらやましく思えてならない。今さらどうしようもないことは分かっているし、ここでこうやって言っていたってどうにもならないことは分かっているのだが。そう言えば、彼らの研究室にはもう一人の人がいるが、その人は、なぜか教育用計算機室のプリンタを使っていた。彼らの研究室にはプリンタがないのだろうか。なんとなく、思い出した…。

彼女、水曜の4限は講義を受けたかったが、用事があって忙しいから受けられないと言っていた。…それさえ受けていてくれれば、少なくとも1週間に1度は会えるのに。

…ばかばかしい。会ったからって、もう手が届かないことは変わりないのに。いろいろ言っていたって、僕にはもう彼女を追うつもりなんてないのだ。追いきれるものか。僕よりも前にいる上に、僕よりも速く走っている人間なのだ。僕に何ができると言うのか。

それはそれとして、最近、あまり人に会っていなくて、かなり寂しかった。家族とか数人の友達とは会っていたのだが。前からちょこちょこ書いているが、インターネットでの知人はそれなりにいて、連絡も普通に取れているのだが、それで孤独がいやされるはずもない。コンピュータという、直接会うこととは比べものにならないほどの低レベルなインターフェースを通してしまうと、独特の楽しみはあるものの、所詮、得られるものなどたかがしれている。人と直接会うことができて、余裕があって、それで初めて楽しめるものなのではないだろうか。インターネットのコミュニケーションだけで幸せだと思える人は、異常なのではないか。…世間一般ではそう言われるが、少しうらやましい気がする。幸せなんて他人が定義するものじゃない。それで幸せを感じられるのなら、それはよいことなのかもしれない。もっとも、社会に認められない幸せなど、所詮長続きしないのだが。

それで今日は、講義を受けたので、いろいろな人と話ができた。5分ほど立ち話をしただけだが、それで十分だ。大学院に行ったらどうなるのかと不安に思うが、今は、これで少しは癒された。にしても、どうも男と話すときと女と話すときで、気分が違うような気がする。昔はそんなこともなかったのだが…。女好きになったのかな?男なら誰でもそうだ、という意見もあるようだが。それとも何かコンプレックスでもあるのだろうか。こっちの方があり得る気がする。無意識のうちに上に見ている相手と話せるからうれしい、と。まあ、どっちでもいいのだが。

さて、明日は研究室の引っ越しだ。力仕事になるようだが…。果てさて、今の運動不足の僕に、どこまでやれるのやら…。

2003.04.16 (Wed) 20:01:46


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