Seakの日記
日々感じたことを書き留めていこうと思っています。

2003年02月17日(月) 生活を失うとき

2003.02.18 (Tue) 1:24 Viewer: 18 Access: 6225 (+27) Letters: 4806
今日は、線形代数の試験があった。
少し早めに行って、勉強をしていたのだが、
数学の勉強を30分したところで、
それほど効果があるはずもなく…。
まあ、試験の内容が簡単だったので、
それでも、やらないよりマシ、という程度の効果は出たが。
はっきり言って、やる気なんて欠片もなかったので、
土日とも、何の勉強もしなかった。
…大学生活の日記じゃないな。こんなの。
普通の大学生は、確かに普段は勉強しない人が多いが、
試験前くらいは勉強するものだ。
誤解なきよう…。
ちなみに、何度も何度も書いているが、
普段からちゃんと勉強する人だっている。

試験は簡単だったのだが、
それ以上に勉強していなかったので、
半分くらいしか解けなかった。
単位が出るかどうかは微妙なところだ。
下駄を履かせてくれるはずのレポートを出さなかったというのもある。
ただ、補講もあるので、何とかなると信じたい。
なんせ、必修だ。
これを落とせば、下手をすれば、
大学院への推薦どころか、一気に卒業も危うくなる。

それから、実は一般教養系科目の単位も足りていない。
朝、早起きできないからと言って、
1年生の頃、捨てまくったのがたたったのだ。
まさか、一般教養が足りなくなるとは思わなかった…。

その試験が終われば大学に用はないのだが、
一応、その場に残っていた。
…もう、友人と会う機会も少ない。
隠すこともないだろう。

警告する。
今まで僕は、知っている人が読みに来るからと、
遠慮していた。
僕のことを直接知っている人は、
この日記をブックマークから外すことを勧める。
もう、遠慮はしない。
この日記で気持ちを隠すようになって、
いつしか、実生活にまで影響が出てしまった。
ずっと心の中にしまい込んで、
やりたいことも、思っていることも、
何もかも隠していては、何もできない…。

彼女と会いたかったのだ。
もう、彼女と会える機会なんて、数えるほどしかない。
今までの、何の苦労もなく会える環境に慣れすぎて、
顔を合わすことすらできない未来の状況が、
イメージできていなかった。
プラス思考が裏目に出てしまった。

僕が試験を終えたとき、彼女は図書館にいるはずだった。
試験のない時は、彼女は図書館で勉強していることが多いからだ。
そちらへ向かおうとしたら、いきなり彼女が建物に入ってきた。
僕の顔を見ると、軽く手を振ってくれた。
まさか、君に会いたかったなんて言うわけにもいかず、
僕はしどろもどろになりながら適当なことを言って、
その場を通り過ぎた。

…冗談じゃない。これで終わりだって?
建物を出たところで、僕はそこから引き返した。
今さら細かいことを気にしてどうすると言うのだ。
幸い、彼女はまだ教室に入らず、その場にいた。
僕は、「試験の調子はどう?」などと、
かなり無意味な質問をした。

あまり良くない、と言っていた。
彼女の場合、単位として許せるのは優だけで、
最悪でも良らしいから…。
可をもらうくらいなら、不可の方がいいのかも知れない。
うちの大学は、不可になると、不可という単位がつくのではなく、
何の単位も出ない。
つまり、もう一度履修して、良い成績を取ることが可能なのだ。

結局、たいした話はできなかった。
試験の話に終始しただけだった。
でも、何の話もしないよりは、ずいぶんマシだ。
これで終わりと思うと、あまりに寂しすぎるが…。
同じゼミになったやつが、うらやましくてたまらない。

僕が今のゼミを選んだのは、
それなりの将来設計があったからだ。
知識情報設計研究室という名で、
人工知能の研究などをしている。
コンピュータの勉強をするには、かなり適した環境と言えるだろう。
流通の色が濃いうちの大学で、
情報関係を専攻できそうな研究室はここしかなかったのだ。

一方彼女は、
うちの大学の中でも、もっとも流通の色の濃いゼミを選んだ。
他の研究室がソフトウェア開発を
ゼミの一環として取り入れるという話をする中で、
その研究室は、そういう話は一切なかった。
研究そのものは実に有意義なものであり、
教授の実力も業績も優れたものだが、
僕の意図する目的とは、まったくかみ合わない研究内容なのだ。

…それでも、そのゼミに行こうかと思った。
もちろん、それだけの教授がいれば人気もあるわけで、
僕がそこのゼミに行けたかどうかは知らないが、
それでも、行きたいと思った。
1年間、彼女と一緒に過ごせれば、
僕の足りない脳味噌からひねり出した将来設計など、
捨ててもいいと思った。

だいたい、Javaを選んだわけだが、
この言語は、未来が危ない。
下手をすれば淘汰されて、身につけた知識が
何の役にも立たなくなる可能性がある。
コンピュータ言語というのは、
ある程度その内容を理解しておけば他にも応用できるものだが、
それにしたって大きなマイナスだ。
はっきり言って、その危険性について、
調査などまったくしていない。
方法が分からないし、調査をしたところで
所詮未来予測など曖昧なものだ。
それが正確に分かるならば、誰も無駄な苦労などしない。

そうして専門の知識を学びながら
派遣社員として現場の経験も積もうと思った。
しかしこれだって、果たしてゼミで専門の勉強をする必要があるのか、
かなり疑問の余地はある。
必要ならば、大学でやらなくたって
身に付くことかも知れないからだ。

結局のところ、将来設計と言ったってこの程度だ。
この程度のことが、本当に彼女よりも優先すべきことだったのか?
もう、分からなくなってしまった。
いや、理想通りに進むことが分かっていたとしても、
それを捨ててもいいと思った。
彼女と共に過ごせるのなら、
1年をムダにすることくらい、何だと言うのだ?
確かに、僕の未来には大きな損失かも知れない。
だが、僕は僕の未来のためだけに生きてるわけじゃない。
僕は今を生きているのだ。
大事なのは将来だけじゃない。

彼女のゼミでは、
研究室に入る際、研究テーマを明確に示せと言われたらしい。
…僕に示せるはずもなかっただろう。
彼女と一緒にいたかっただけで、
その教授の研究に興味を持ったわけではなかったからだ。
でも、それでも何とかできたと思う。
研究しようと思えるテーマではないが、
流通分野は今まで大学で学んできたことではあるし、
他人事としてみれば、十分興味深いことではあったからだ。
今の僕にとって、
流通の学問は、心理学や医学と同程度の価値はある。
お話として聞く分には、おもしろいと思う。

僕の文章は、
上っ面だけを見ると、比較的よくできているように見えるらしい。
それは、前にも書いたように、
内容を理解していないにも関わらず、
論述の試験でほとんど優を取ってきたことからも分かる。
…そりゃあ、まあ、
毎日毎日こんな日記を書いていて、
他の学生とまったく差がついていなかったら、
少なくともこの日記を書いている1つの目的、
論理的で客観的な表現に慣れる、
という目的は、まったく達成できていないことになってしまう。

僕は、科学の入門書程度の本なら、
割とよく読んでいる方だ。
図書館の貸し出し冊数は、おそらく全学生でトップではないだろうか。
昔は慣れなくて、何を書いているのか理解するのに時間がかかったが、
今はもう、電車の中で斜め読みするだけでも、
概ね理解できるようになった。
このような科学で用いられる客観的な表現には
慣れたつもりだ。

…それでも、先程述べた、
彼女のゼミの教授には通用しなかったかもしれない。
論述で可を取ったのは、
後にも先にも、その教授の科目だけだ。
もっとも、それは1年生の前期だったから、というのもあるかも知れないが。
それでも何とかできたと思うのは、
結局、そのときに僕に、強い意志が伴ったからだろう、と思うからだ。
前にも書いたが、能力を生かすのは、
その人の精神、意志の強さだ。
漠然とした将来設計よりも、
ただ、彼女と一緒にいたいと思うことの方が、
意志の源泉としては、より強力だったに違いないのだ。

…今になってこんなことを言っても、何にもならない。
結果として、僕はこの道を選ばなかったのだ。
その要因はいろいろある。
興味がないということもあったし、
友人がそのゼミに行こうとしていて、その友人は僕と違って、
本気でその分野を学ぼうとしていたというのもあった。
教授の性格が、僕に合いそうになかったというのもある。
平たく言えば、酒が好きそうなのだ。
さらに、その研究室の助手が大嫌いだったというのもある。

しかし、そんなことはどれも些細なことだ。
興味なんか関係ない。彼女がいればそれでよかった。
友人なんて、蹴落としてもよかった。
彼女と一緒にいられるのなら、
それで友人の夢がつぶれたとしても、僕の知ったことではなかった。
教授の性格なんて、我慢すればいいことだ。
助手にしても同じことだ。
言うことを聞かなければ、そのうち干渉されることもなくなるだろう。
確かに、生活は最悪なものとなっただろう。
興味のないテーマを、好きになれない教授の下、
大嫌いな助手に指導されて、
友人の夢を叩きつぶした罪悪感に苛まれながら、
ずっと研究し続けなければならなかったのだ。

それでもよかった。
すべての人、…たぶん彼女にも不幸をもたらす選択だったが、
それでもよかった。
選ばなかったのは、見通しの甘さがあったからに過ぎない。
どこかで今の状況に甘んじていた。
話そうと思えばいつでも話せる。
顔を見るくらい、何でもないことだと。
呼べば笑いかけてくれる。
今まで僕は、彼女の中で、
少なくとも1人の友人として、ある程度の位置を占めていたはずだ。
何の根拠もなく、この状況が続くと思っていた。
感覚的に、そんな風に思っていた。

そんなわけはない。
一度は心を通じ合わせた恋人たちだって、
距離が離れるだけで、心まで離れてしまうではないか。
ましてや、こんな関係の僕たちが、
会う機会を失ったら、もはやそれはただの他人だ。
時候の挨拶を送れば返してくれるかも知れない。
でもそれは、今までの関係とは明らかに異質のものだ。

そうだ。夢の時間は終わりだ。
ずいぶん前に気づいていたはずなのに、
ずっと気持ちを隠して、逃げ続けているうちに、
見失ってしまっていた。

たぶん、こんなに強い感情を抱いたのは、
物心つくかつかないかの子どもの頃はいざ知らず、
記憶に残っている中では、初めてだ。
どちらかと言えば冷静で客観的な考え方が好きだったので、
感情的な混乱は、それだけで僕を戸惑わせた。
何をしていいのか分からなかった。

いつしか、そんなことも忘れ去ってしまった。
気持ちを隠し、自分は冷静だと言い聞かせ、
ゲームに現を抜かしているうちに、
あらゆる感情は消えてしまった。
今はもう、その残骸に縋り付き、
過去はよかったと懐古しているに過ぎない…。

何があったわけでもない。
ただ、静かに失うだけ。
きっと苦しみは、細波のように、静かに押し寄せる。
少しずつ、でも確実に…。

知らなければ、失うこともなかった。
僕は今の環境に満足していたし、
望むものなんてなかった。
彼女を知ったことは、僕にとって不幸だったのか?
僕はつかの間の幸せを得て、
それを失うことで、絶望の底にたたき落とされる運命にある。
それ以前と何が変わったわけでもない。
なのに、すべてが色あせて見える。
稚拙な例えだが、
蛍光灯に慣れていたところに突如、太陽の光を得て、
その太陽の光に酔いしれていたところで、突然太陽を失う…。
そんな感じだ。

ちなみに、失うのは彼女だけではない。
今までの人間関係の多くは消えるだろう。
環境が変わる以上、仕方のないことだ。
この今日の日記で、
おそらくはこの日記を読みに来ている、友人の信頼も失うことだろう。

失うことを恐れては何もできない。
正論だが、しかし、
やはり失うのは怖いよ…。
できることなら、何も失いたくない。
もう得られるものなんてないんだから、
あとはもう、失うしかないのだけど…。

2003.02.18 (Tue) 2:45


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