六本木ミニだより
DiaryINDEX|past|will
■大学4年の夏に受けた、講談社の筆記試験のなかで、今でも忘れられない問題がある。時事的なキーワードをいくつかあげて、コメントをつけさせるという問題のなかで、「ランディ・バース」というのがあったのだ。1987年のことだ。
■知らない人もいるかと思うけど、ランディ・バースというのは、当時の阪神タイガースのバッターです。後でモルツのCMにも出てましたね。19年前の阪神優勝のときの立役者だったバースが、その年、突然、退団、帰国して、世間は大騒ぎになったのだ。それは、彼の退団の理由が、「難病の子どもの手術のため」というものだったからである。ほんとうに、そんな理由で勤め先をやめる男がいるなんて、当時の日本人には、「3人目の妻が妊娠したから帰国する」というぐらい現実離れしたことだったのだ。当時のランディに対するマスコミの視線は、「そんなことで帰国するなんて、我がままだ」という風潮が圧倒的だった。
■私は、試験問題に、「彼に対するこの厳しい風潮は、子どものために自分の意思で時間をさきたくても、そう簡単にはできない日本のお父さんたちの嫉妬ではないか」と書いた。この筆記試験を友人たちのなかで私だけが通過したのは、この回答のできがよかったからだと今でも思っている(その後、面接で落ちたけど)。
■バース・バッシングが一段落してから、評論家たちの、「アメリカでは、子どものために仕事をやめたり変わるのは当たり前です」といったコメントが出てきた。「やっぱり日本と違うんだな」と、当時の私は感じたものだ。 今、テレビを見る時間はますます減ってしまって、yahooでしかニュースを読まないのだけれど、マリナーズ佐々木主浩投手の退団のニュースを聞いて、バースの事件のことが思い出された。今回の退団を、アメリカでも批判する人はいるらしい。結局メディアの舵取りひとつで、どうとでも書けることなんだよなあ、と今は感じる。だからニュース見るのいやになっちゃうんだよね。
|