六本木ミニだより
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2003年07月17日(木) |
『レボリューション6』/『サロメ』 |
『レボリューション6』
20代の頃『テロリストのパラソル』を読んで「おじさんだよなあ」と思った(今読むと、全共闘がおじさんなんじゃなくて主人公のハードボイルドさがおじさんなんだけどさ)。今の20代の人が、『レボリューション6』を見たら、やはり「おじさんだなあ」と思うかもしれない。でもそれでいいのかもしれない。 ドイツ映画。1980年代、西側でも当局に抵抗する動きはいろいろあって、主人公の6人は、その先鋭だった。それが、ひょんなことから、21世紀の今にもう一度集まって活動せざるをえない状態になってしまったというお話。 わたしが、自分を「共感できるなあ、したがって私もおばさんなんだなあ」と思ってしまったのは、足を洗った主人公たちの職業です。広告代理店のエグゼクティブ(90年代語)になって、「I love Bil Gates」なんてTシャツ着ていたり、検事になってたり、金持ちとロマンスしていたり。つまり、しっかりバブル資本主義が身についちゃってる。今の20代の人たちって、「30代の、バブルを知っている世代の人たちは暑苦しいから付き合いたくない」っていってるんだってね。それをちょっと思い知らされた。 そんなわけで、20代の人は嫌いかもしれません。でもね、昔もいろいろ事情があったのよ、っていう点で共感できる人は、30代の人とお友だちになれるかもしれません。そんなことを考えた映画でした。あえて、「平和ボケ日本と、ベルリンの壁にはばれていたにドイツとは違うのよ」みたいなことはいいたくありません。
『サロメ』
英語の勉強をまじめにやるようになって以来、本当に「映画は吹き替えが正しいなあ」と思っているんです。字幕見ていると、画像とか、音楽とかいろいろ見落としちゃう。 この『サロメ』がすごいのは、舞踏映画ですから、字幕いっさい必要なし。映像と音楽で、たっぷり堪能させてくれること。わたしは映画の途中で時計を見るくせがあって、ふつうのだと1時間ぐらい、つまらないやつだと40分ぐらい、おもしろいやつでも90分ぐらいで一度時計を見るのですが、この映画は、とうとう最後まで時計を見ませんでした。 スペインのカルロス・サウラ監督作品。サロメを踊るアイーダ・ゴメスは98年から2001年までスペイン国立バレエ団の芸術監督をつとめた人で、それはそれはもう、すごい。わたし、こんな「美しい肉体」って、見たことない。一応フェミニストっていうのは「わたし自身の身体に自身を持ちましょう」みたいなことを提唱しているんだけど、この人と比べてだったら、「わたしの身体は醜い」ってすなおに認めちゃう。認めちゃうことにまったく屈辱を感じない。 自立的で、躍動的で、むだな脂肪はなく、筋肉はしなやかに細く、背骨はまっすぐ、おっぱいはまん丸に飛び出し、ウエストはストイックにしまり、お尻にセルライトは皆無、表情豊かな手足。「女性性を最大限に出してしかも男に媚びていない」とは、こういうことをいうのです。 バレエというのはあらゆる舞踏のなかでも「身体を鑑賞する」ことに非常に重みを置く芸術なのですが、その価値がある肉体です。 バレエ映画は、『エトワール』をはじめ、ロングランヒットが続いています。いいことです。バーチャルな時代に身体性を渇望する。塩分の足りなくなった動物が地の塩をなめるように、自然な欲望だと思います。この映画は、ドキュメンタリーではなく映画がストーリーをちゃんともっているという点でも、一般の観客にもおすすめです。
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