六本木ミニだより
DiaryINDEX|past|will
(今日は午前中に25日分の日記を書きましたので、更新は2回目になります)
小学校の入学式の日、私の前の席に座った「みやこちゃん」は、四代続くテーラーの娘さんでした。 四代って明治から続くってことですから、日本に「洋服」というものが輸入されてから、ほぼ同時期を洋服作り続けているお家なわけです。 そのみやこちゃんが、「中小企業なんとか公庫」からお金借りて自分の店を持ったのが七年前のこと。当時から「ぜひ見に来てね」といわれたり、「雑誌にのせてもらいたんだけど、どうしたらいいだろう?」という相談にのったりしていました。
とはいっても、自分にとって「オーダーのスーツを頼む」など、縁がないことだと思っていました。 ところが、彼女のデザインする服は、私にとっても、「そうそう、こういうものを欲していたのよ、私は」と思えるものだったのです。というのは、紳士服の素材を使って、女性用のスーツを仕立ててくれるのです。従来の、いかにもフェミニンな素材を使った「洋装店」というイメージとは、まるで違いました。 しかし、具体的に着る機会もありませんでしたし、金銭的にもそれなりの勇気がいりますから、実際に頼むことはなく、七年間が過ぎました。
このたび、大学の時に買った喪服がさすがにもう着られないので、ついにオーダーすることしました。 今、先日退院した祖母は、日常生活を楽しめるほど元気に回復しているんですね。ですから、今のタイミングをはずしたくないと思ったのです。 実は、一昨年、祖父が死んだときも、買いに行くタイミングを逃してしまって、手近の紺のスーツで間に合わせてしまったのです。 そして、喪服ではありますが、他の機会にも着られる服にしたいので、「黒でない色を」ということで頼んでみました。すると、「グレーは霜降りが入るのでどうしてもカジュアルになる。喪服にするなら濃紺でほとんど黒に近いのがある。それがいいのではないか」との返事。先日、見本を見せてもらいに行きましたら、これがすばらしいので、この色で作ってもらうことにしました。 素材は、イタリアの「ロロ・ピアーナ」という会社の布地を使って作ってくれます。「ロロ・ピアーナ」というのは、「アルフメネド・ゼーニヤ」、(もう一つ何か忘れた)と並んで、イタリアの三大テキスタイルメーカーだそうです。もちろん、立体裁断です。
気になるお値段ですが、私が92年に結婚したときのホテルでのウェディングドレスのレンタル代と、ほぼ同じぐらいのお値段です。(私はドレスブラックで既製品を買っちゃったので、それよりさらに安かったんですが) 「結婚」「誕生」というおめでたい席に、お金や手間暇をつぎ込むのってて楽しいし、話題にするのも楽しいですよね。でも、「死」という俗にいう「不幸」の席でも、学ぶものはたくさんあるし、それなりの気持ちをもって臨みたい、という気持ちが、今回の決断の背中を押したような気がします。
実は、この日記によく出てくる祖母というのは死んだ母の母で、母は一人娘だったんですね。そして、私は子どものなかで長子です。 ということは、祖母が死んでも、父が死んでも、セオリー通りにいくと、私は「喪主」なんですね。 このHPに訪問してくださる方は、私より歳下の方が多いようですし、冠婚葬祭の中で話題になるとすれば、圧倒的にウェディング、つまり「婚」ですよね。でも、私は、もう一つ先のステップ、「葬」の方を気にする歳になってきたようです。 みんなより、ちょっとだけ人生の先の方を、一足先に歩ませていただきます。
|