今夜、韓国・光州マダン劇団<ノリペ・シンミョン>による来日公演『立ち上がる人々』を白川公園まで観に行ってきた。野外劇だ。 マダンには「広場」とか「人々に開かれた空間」といった意味があるそうだ。マダン劇というのは、1970〜80年代にかけて、韓国の若者たちが創りあげた演劇のスタイルで、その根源は朝鮮半島で古くから民衆に愛されてきた芸能に由来する。風刺劇やタルチュム(仮面踊り)、農楽(チャンゴ、ケンガリ、プク、チンの4種類の打楽器を用いた演奏)等を西洋から入ってきた舞台演劇に取り入れ、民衆の伝統的な文化の楽しみ方を再現したのがマダン劇である。マダンの周りを観客がぐるりと取り囲み、演者と観客が声をかけあいながら、一体となって楽しむのだ。風刺と笑いを存分に盛り込んだマダン劇は、70年代から80年代にかけて、街頭や大学キャンパスで演じられ、当時の韓国軍事独裁政権への対する異議申し立てとして、民主化運動の学生や市民、労働者によって担われた。 さて、今回の『立ち上がる人々』だが、これは光州事件(1980年5月18日から27日にかけて韓国の全羅南道の道庁所在地であった光州市で発生した、民主化を求める活動家とそれを支持する学生や市民が韓国軍と衝突し、多数の死傷者を出した事件)をモチーフとした作品である。重いテーマを含んだ作品だが、これが演劇的にも非常に面白く、最後まで目が離せなかった。 冒頭は滑稽な踊りや掛け合い漫才のようなテンポのいい芝居。2場は一転して躍動的な群舞、力強いミュージカルを見ているかのよう。そして、緊迫の3場、クライマックスへとなだれ込む。エピローグでは、何台もの太鼓が加わり、農楽隊と共に、マダンを圧倒的な音の渦に巻き込み、そこに祝祭的空間を創り上げていく。最高の芸能を目の当たりにして、終演後もしばし放心状態の私であった。 前座の朝鮮舞踊もとても美しくステキな踊りだったということを、付け加えておきたい。
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