ソウル・ミュージックの歴史にその名を深く刻まれたレイ・チャールズ(昨年亡くなられた)。そのレイ・チャールズの生涯が描かれた劇映画「Ray」を観てきた。 私は、社会的にも成功し名声を築いた後のレイ・チャールズしか知らない。今日の地位を得るまでのレイの挫折や葛藤というものを知らずにきた。美しいメロディーを切々と歌い上げるレイの歌声の素晴らしさはあらためて言うまでもない。その高い才能は誰もが認めるところだろう。レイがあまりに偉大であったためか、私は、彼が盲人であること、黒人であることをも意識せずにきた。けれども、レイだって、障害者差別、人種差別の現実と無関係に生きてこられたわけではなかった。 大衆受けもするレイの音楽は、ともすると甘ったるく感じられることもあった。ソウルフルであることは間違いないが、その音楽から「反骨」をイメージすることはほとんどなかった。でも、レイは行く手に立ちはだかる現実の壁にぶつかり、常に格闘してきたに違いない。レイの歌声が深く私たちの心に沁み入ってくるのは、そのせいかもしれない。 レイにはそうした力強い生きざまとともに、女性問題を抱え、麻薬中毒にも陥る、という弱い一面もあったようだ。そうした一面も、映画のなかで描かれている。弱さも含めてとても魅力的なレイが描かれた映画であったと思う。
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