夏撃波[暗黒武闘戦線・歌劇派]の独白

2003年03月10日(月) この人の一体どこが「障害者」なの?!

 昔、私は障害を持つ人達と共同生活を送っていました。今晩、そのなかの一人、Kさんから電話がありました。Kさんとは時々電話で話すのですが、開口一番「失業してまった」とのこと。もう少し事情を聞いてみると、どうも勤め先の工場移転のため通勤が困難となり、職場を辞めざるを得なくなってしまったということらしい。Kさんがその勤め先を気に入っており、また張り切って仕事していたことも知っていただけに、どう声をかけたものか戸惑ってしまいました。私が言葉を失っていると、Kさんは「大丈夫だわ、すぐにいい所、みつかるわ」と自分に言い聞かすように言い、明るく振る舞おうとしているようでした。「そうだよ、Kさんならきっといい所に行けるよ」と私は応えました。
 今日の日本経済の状況について私は承知しているつもりです。そして、それが障害を持つ者に及ぼす影響についても。おそらくKさんもそのことは身にしみてわかっていることでしょう。でも、どこかで希望を見いだそうとしているのです。Kさんのような真面目な人がバカを見る世の中であってはならないはずです。

 Kさんとは6年ほど共同生活を送った間柄ですが、必ずしもいいことばかりではありませんでした。関係がうまくいかない時期もありました。でも、そんなことがありながらも、お互いに認めあえるようになっていきました。知り合った頃のKさんからはどちらかと言うと依存的な面が強く感じられましたが、様々な困難を経験していくうちに力強さを身につけていったように思われました。自信を持っていきいきとしているKさんの姿に、私は驚かされたものです。もともとKさんにはそれだけの力が備わっていたのだと思います。でも、そのことに気づくまでに長い時間がかかりました。
 「健常」の身である私には、「知的障害」を持つ人の苦難を実感することはできません。Kさんも、「知的障害」ゆえにバカにされ悔しい思いを幾度となく経験したことでしょう。幼い頃から「バカ、バカ」と言われ続けた人間が自信を持って生きていくのは並大抵のことではないはずです。Kさんは、つつましやかに生活を送り、ささやかな幸せを感じているようでした。そして、自分の仕事に何より誇りを持っているようでした。失業はKさんにとってショックであったことでしょう。でも、懸命に自分自身を支え、希望を持ち続けようという姿勢には、感服します。私は言いたい。そんなKさんのどこを指して世間は「障害者」と呼ぶのか、と。
 Kさんをはじめ「知的障害」を持つ人々は、日々あらゆる困難な状況の下に置かれています。この世の中、理不尽なことばかりのようにも思えてきます。でも、まんざら捨てたものでもないはず。最後の最後まで希望を信じ続けていきたいものです。


 < 過去  INDEX  未来 >


夏撃波 [MAIL]