鈴木忠志演出によるSPAC公演『ザ・チェーホフ』を、静岡芸術劇場に観に行ってきた。日本において、チェーホフは翻訳劇ではおそらくシェークスピアに次いで上演されることの多い作家だと思うのだが、私はこれまで「チェーホフもの」を観たことがなかった。 『ザ・チェーホフ』は、チェーホフの3つの戯曲『イワーノフ』『桜の園』『ワーニャ伯父さん』をモチーフとしたオムニバスだが、演出的にも面白く、役者もまずまずの出来だったように思う(セリフの言い方がどことなく「クセック」のようでもあった)。でも何よりも私は、チェーホフの戯曲に垣間見られる人生観に対してある種の共感を覚えるのだ。意味の崩壊した世界に存在しつづける人間の孤独・疎外感・喪失感・・・、しかし、そのなかでも人間は生きていかなくてはならないのだ。そんなメッセージを私は受け取るのであった。また、チェーホフを読んでみたくなった。
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