夏撃波[暗黒武闘戦線・歌劇派]の独白

2002年08月26日(月) 笑え! 五体不満足

 図書館から借りていた本の期限が疾うに過ぎている。今日、県図書館に『地球の歩き方(ロシア編)』を返却してきた(閉館日の今日をねらって)。でも、もう1冊、市図書館から借りた本(ホーキング青山『笑え! 五体不満足』)を返しにいかなくてはならない。そこで(?)今日はその本の「読書感想文」めいた文章を綴ってみることにしたい。

 言うまでもなく、この本は、あの乙武洋匡『五体不満足』を意識して書かれたものである。著者は、身体障害をもつお笑い芸人・ホーキング青山。「乙武現象」「『障害者』に関する世間の勘違い」等をブラックな笑いで語り、「身障者(自らをも含む)」もお笑いの対象にしてしまう。青山は、決して「立派な障害者」などではなく、とても「ええかげんな障害者」だと思う。でも、そこのところがいいのだ。「障害者」にだって「ええかげんな」ヤツは多いだろう。「ええかげんな健常者」が堂々と生きているのと同様に、「障害者」だって「ええかげんな」まんまでも堂々と生きたらいいと思う。とはいえ、「健常者」と「障害者」とは事情が違うことも確かだ(簡単に言ってしまえば、「俺はひとりでも生きていけるんや」と豪語できる人間と、「他人の助けなしでは生きていけない」という人間との違いだ)。今日の社会において「障害者」が「ええかげん」なままで世間から好意的に見られるということは、ほとんどありえないことだろう。「健常者社会」から好意的に迎えられるためには、乙武のように「いつでも」周囲にさわやかな笑顔をふりまいていかねばならないだろう。でも、それで「障害者」が本来の意味で解放される日は決して訪れない。
 私は、一時の「乙武現象」に対して批判的な立場(『五体不満足』には「不満足」なのだ)だが、批判の対象は乙武である以上に、『五体不満足』に満足しきっている「健常者中心の社会」ということになる。この問題は、語りだしたらキリがないので、このあたりにして、最後に青山が「ミゼットプロレス(小人プロレス)」に関して綴った文章について言及して終わりたい。まずは、引用から。

  女子プロレスの興行には「ミゼットプロレス」という試合がある。これは要す るに、小人症の人たちがプロレスの試合を披露するのだが、これも「障害者を見 世物にする気か?」ということで、つい数年前までテレビで放映されなかった。
 (中略) このミゼットプロレスの試合は本当にクオリティが高く、いつも会場 を大いに沸かせている。初めてミゼットプロレスが紹介されたテレビのドキュメ ント番組でも、選手達は「長年、メディアで取り上げて欲しかった」と言ってい た。
  相手の気持ちや欲していることを分からないで、単なる独り善がりで、一方的
 に自分の価値観を押しつけることによって、身障側にどれほどの犠牲と被害が出
 てると思ってんだ?
  ミゼットプロレスを「障害者を見世物にする気か?」というが、オレに言わせ りゃミゼットプロレスよりも「24時間テレビ」なんかでやってる身障を題材に
 したドラマのほうが、よっぽど身障を「見世物扱い」してると思う。

 全く同感だ。と同時に「『障害者』とそれをとりまく関係」をテーマとした表現を追求する私にとって、そのことは常に念頭に置くべき事柄でもある。私は、ますます覚悟を決めて、自らの追求するテーマにどこまでも食らいついていこうと思うのだ。


 


 < 過去  INDEX  未来 >


夏撃波 [MAIL]