バカ恋
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■ 懐かしい人 ■


遥か遥か昔、

サクラの季節になると何時も

一緒に御花見をした親友がいた。

其の親友は男だったけど、アタシにとっては大事な人で、

彼とはしょっちゅう何処かへ行った。





アタシも彼もちょこちょこと恋人が出来たりしたけど、

其れでもアタシ達は恋人達に気兼ねする事無く遊んだ。

何度目かの季節が過ぎた或る日、

彼は当時付き合っていた彼女と別れてしまった。

何となく元気のない彼を、アタシは食事に誘った。

何時もみたいにバカ話をしながら御飯を食べて、

何時もみたいに車の中で騒いでいたら

彼が突然アタシを抱きしめて言った。

俺じゃだめ?

アタシはとてもとても驚いて、

気恥ずかしくて、

そして

彼を拒絶してしまった。

けれど、彼は続けて言った。

本当に大切に大事にしたいって思ってたんだ、ずっと前から・・・





アタシにとって彼は親友だった。

けれど、本当は彼の気持ちを何気なく感じていた。

其れなのにアタシは気が付かないふりをして、

挙句、彼の精一杯の告白から逃げてしまったのだ。

恋人になるのは簡単で、

彼だったらきっと、アタシを世界一幸せにしてくれただろう。

けれど、同時に別れも予感しただろう。

彼の事は大好きだったけど、だからこそ、

友達のままが一番良いのだと、其の時のアタシはそう信じていた。





そんなアタシの都合の良い解釈を彼に求めるのは不可能な話で、

其れきり彼とは会わなくなってしまった。

其の後暫くしてアタシは引越しをして地元を離れ、

彼の話は共通の友人を介して聞くのみとなった。




現在、彼は結婚し子供も出来た。

偶然にも結婚も子供が出来たのもアタシと同じ時期。

こんなところでも息がピッタリだねアタシ達。




もう少し暖かくなったら、

チビちゃんを連れて会いに行こうと思う。

そして、懐かしい話をたくさんしようと思う。

今でもずっと大事な人だから、

またあの頃みたいに笑顔で会いたい。




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