バカ恋 | back index next |
■ 偽善者より愛を込めて ■ まいボスで在られました、なかじぃが退社なさいましたので、 本日より私が設計室室長に任命されました。 だからと云って、給料アップする訳でも無し、 諸々の待遇が良くなる訳でも無し、 増えたモノと云えば、仕事量でしょうか・・・(T∇T) ウウウ と云う訳で、先週までのヌル湯に浸かったような仕事ブリとは、 全く別人のあたしでした。 図面の山に埋もれながら必死に仕事をしていると、 あたし宛に一本の電話。 トン吉さんの通う小学校からのホットラインでした。 どうやらトン吉さんは学校で具合が悪くなり、 早帰りしたいと申し出ているそうなのです。 だが、外は雨。そしてあたしはチャリ。 どうやっても迎えに行く事など侭成りません。 困っていると、経理のオバサンが快く車を貸してくれ、 其の車に乗って、トン吉さんを迎えに行ったのです。 トン吉さんは弐校時目の休み時間中にゲロり、 其の侭保健室へ直行した模様。 迎えに行った時にはゲッソリしてました。 此れは一大事!と思い、直ぐに病院へ連行しようと車に乗せましたが、 当人は頑なに其れを拒否し、自宅で寝ているというので、 あたしは彼女を家まで送り、其の侭会社へ戻りました。 でも待てよ、ひょっとするとひょっとするか? 最近、トン吉さんの様子がちょいとおかしいのです。 所謂、登校拒否っぽい。 転校してから早弐ヶ月。御学友も遊びに来る程になり、 学校にも馴染んで来たと思っていたのですが、 どうやらそうでも無いらしい。 トン吉さんが以前通っていた学校は、中心市街地のど真ん中に在る学校で、 ドーナツ化現象の為、生徒数も極端に少なく、 全校生徒皆御友達状態だった訳なのです。 皆が仲良しだった其の学校が恋しくてたまらないトン吉。 毎日のように帰りたいと洩らしてました。 其の度に叱咤激励してきたあたしですが、 彼女の悩みは思っていたよりも深刻で、 つい先日 あたしパパと一緒に暮らす! と、言い放たれてしまいました。 彼女は言います。 あたしと一緒に暮らしたく無い訳ではないと、 パパと一緒に暮らしたい訳ではないと、 只、生まれ故郷に帰りたい、そして又あの学校に通いたいと・・・ 親のあたしが云うのも何ですが、 トン吉さんはとても我慢強い子です。 其の彼女が此れほどまでに悩んでいたのかと、 其れに気付かなかったあたしはダメ親だと、 深く反省したのでした。 転校の理由が親の仕事の都合なんかであれば、 少しは自分自身にも納得できますでしょう。 しかしながら、今回はあたしの我が侭で此処まで来たようなもんです。 トン吉さんの其の言葉はあたしの心に深く刻まれました。 トン吉さんはきっと、コージが彼女の事で悩んでいる事を、 既に察知しています。 彼女の帰りたい理由にも関係していると思われます。 トン吉さんはコージの前だと、非常にはしゃぐのです。 恐らく、コージやあたしに気を遣っているのでしょうね。 其れにつられてコージもはしゃぎ、そしてお互い疲れてしまうのです。 悪循環、そう、悪循環なのです。 この状況をどうやって乗り切ればいいのか、 彼女が望むのならば、故郷に帰すべきなのか、 其れが彼女の幸せなのか、 あたしには判りません。 トン吉さんを出産した時、あたしは心に固く誓いました。 この子を守ってみせる。 この子を絶対幸せにしてみせる。 と・・・ 離婚を決意した時も、元夫と親権を争い、勝ち取った時も、 何時も何時も思い続けて居ました。 引っ越しすると決めた時も同じです。 親のあたしが幸せならば、彼女も幸せだと思ってました。 果たして本当にそうなのか、今は自信が在りません。 そしてあたしは、彼女が帰りたいと泣き出し、 酷く動揺したと同時に、 心の何処かではコージの不安要素が無くなると、 少しだけ思ってしまいました。 其の時点で母親失格です。 トン吉を抱きしめるこの腕は、裏切り者の腕に成り下がったのです。 トン吉を見つめるこの笑顔は、嘘吐きの仮面で出来ているのです。 |
back index next |
mail home bbs おててつないで |
|