十夜一夜...Marizo

 

 

正義と勇気 - 2005年11月16日(水)



昨日乗ったバスの中で。


発車間際に乗り込んできた親子。
母と息子。

息子は小学校高学年っぽい。


そこそこ混んでいた。


「ここに座っちゃおっ!」と言って
息子が優先席に座った。
その隣に母も座った。

そのバスは少し小さめのバスで
優先席は進行方向には向いておらず
ベンチ式だったのだ。

私はその親子の斜め前に立っていた。


次のバス停でお年寄りが乗車。
腰が曲がりお年寄り特有の小さい歩幅。

優先席はベンチ型のシートなわけで
お年寄りの姿がその親子の目に
入らないわけはない。


優先席の親子はまったく動く気配がない。



ちょっとびっくりしたんだよね。
たまにさぁ 茶髪の高校生の男の子とか
ふんぞり返ってえらそうに座ってる姿は
何回か見たことはあるけどね。


思わずお母さんの顔を見ちゃったんだけどさ。
平然と座っているのね。


そのとき後ろの席に座っていた女性が
席を立ち真っ直ぐにその親子の前に。




「お年寄りの目の前で平気で優先席にいる親子って
 どうなんでしょうか。」

「私はもうすぐ降りますから
 後ろの席にどうぞ」



うん。まぁちょっと言い方キツイけど
彼女のいう事は非常に良くわかった。



母親は・・・・なんつーのかなぁ
その返答がちょっと変だなぁって思ったんだけど

「あらあら、まぁすいません」(明るく朗らかに)

と、女の人に向かって言い席を立った。



席を譲られたお年寄りはなんと
「次で降りるから」と優先席には座らない。


親子はサッサと後ろの席へ移動し座った。


とてーも気まずい車内。



お年寄りは本当に次のバス停で降りた。


お年寄りがみんな座りたいわけではないだろう。
座ったり立ったりという動作の方が
身体に負担がかかって嫌だという人だったのかもしれない。


お年寄りが降りたバス停の次に私が降りる。
その女性は優先席の前に立っていた。
私の隣だ。
どうやら彼女が降りるのはまだ先のバス停らしい。



私は隣にいた彼女に言った。

「とても立派でしたよ。とても立派でした」
「私も同じ事を思っていましたから」


彼女は笑って「ありがとうございます」と言った。



彼女のした行為が正しいかどうかはわからない。
もしかしたらその親子は見た目にはわからない
何かの病を抱えていたかもしれないのだ。

もしくは母親はそのお年寄りに
何度も席を譲った結果、かたくなに
「次で降りるから」と座らない事を
知っていたのかもしれない。



それでも、それでも、
私は彼女の正義と勇気を誉めたいと思う。
Marizo





-



 

 

 

 

目次
過去  未来

 裏十夜