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やすみ日記
梅子
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2016年10月26日(水)
「秘録陸軍中野学校」(畠山清行)

ジョカゲの元ネタいっぱいで楽しい。

・仕立て屋に扮してコードブック盗む(パラフィン紙で型を取って合鍵作るんですね。へー)。
サラリーマンに偽装して旅館泊まって、中居さんに正体バレる。
・ガサ入れするのに「見つからなければハラキリします」(で、憲兵に扮して捜索)。
・ダブジョそっくりの書生に扮して長期間潜入。
(優秀な農家の娘も、女中に扮して一緒に潜入。女性のスパイも居たんですね)
・「平服で敬礼するな」「死ぬな殺すな生きて帰れ」、天皇制についての議論。
・試験内容(テーブルの上にあったものを後で訊く。さっき上がってきた階段の数を訊く。地図から島を消して訊く)
・軍用鳩研究所の建物に移転
等々。

卒業生が、一時帰国の時、必ず学校に遊びに来て。
卒業生が知らぬ間に寝室に入り込んでて、一緒に泊まってるというのが、微笑ましい。

秘密通信の方法。
・切手の種類や数で伝える。
・普通の手紙の行間に、隠しインクで書く。
・白いワイシャツに隠しインクで書く→インク露出用の薬品かけると見える。
・水で書いて、薬品をかけると字が浮き上がる紙。
・同じ辞書を二冊買う。一冊本部、もう一冊自分が持って、コードブック代わり。
などなど。へー。

一期生は、食券もらって食堂で食事してたんだけど足りなくて。
放課後、秋草中佐の自宅に行って、すき焼きや蕎麦をごちそうになってた話、かわいいな。
銀座の高級レストランに連れてかれて、テーブルマナー教えてもらったり。

7時に起床して散歩か道場で運動。10時〜5時まで授業で、あとは自由時間。外泊もOK。
遊びすぎた一期生が、福本中佐にお金借りて(大抵返せない)、
彼らが卒業する頃には、中佐の預金が0円って話。いい話だけど、気の毒な。

変装学ぶのに、映画の撮影所に行ったり。
ある時「すごい美人が教室に来た!」と思ったら、新派の女形だったり(変装の教師)。

忍者の授業もあり。
この先生、メモは一切取らない、一度聞いた歌を完璧に歌えるとか凄い人。
あと、忍者扇子というのがあって、分度器代わりになって、A地点からB地点までの距離を測ったりするのに役たつそう。忍者凄い。

1期生は特に、身内と縁を切り、たった一人、功を誰にも知られず、外国で一生を過ごす覚悟だったし、建物が狭くて同じ部屋で寝てたので、仲が良かったとか。
五十年くらい経った後も、ずっと連絡を取ってたり。一期生が外国に残してきた子供の面倒を見たり。

リスボンで大臣令嬢に結婚申し込まれた人がいたり、皆、結構、任務先でモテてるので、D機関もこういうことありそう、と思いました

偽名をつける時、母方の姓や、親戚から一字取ったり。大抵は本名から1字取ったそうです。

一期生が卒業する頃、本部では未だに「本当にスパイ学校なんて必要なの? 役に立つの?」という目で見られていたので、
ある時、秋草中佐が本部に呼ばれて行って、机の上に陸軍省の極秘資料をドサっと置いた。
卒業試験代わりに、一期生に命じて盗ませたものだった、って話、面白い。→

変装方法。
裏表違う生地の服を着る(部屋に入って一瞬で着替えて、付け髭や帽子で変身)ってのは分かる。
けど、「鼻の穴に差し込んで高低つける」ってそんなことできるの?(^^;

演習で、神戸製鉄所に潜入して、爆弾と書いた紙を貼ってきて、最後まで全くバレないというエピソードも楽しい。
(仕掛けられる方は『軍人が来る』と思ってるので、背広着て一般人ぽい訓練生に全く気づかない)

中野学校の隣に憲兵学校があった。
そこでも諜報を教えていたので、憲兵学校の卒業生は自分たちを「世間で言う、中野学校生」だと思い込んでた。
戦後、撮影所から「中野学校を舞台にした映画作るから監修に来て欲しい」と言われて行ったら、どう見てもスパイっぽくないガラの悪い人がいて、聞いてみたら憲兵学校卒だったとか。

一期生の田崎っていう人がいたり。
上から消せと言われても、殺さず、対象者をこっそり逃がしてた。
著者は、中国人と韓国人に「中野学校卒業者に命を救われた。探して欲しい」と言われたことがあるのが、偽名で誰だか分からない。この人かも?って話とか。

中野学校では「味方に嘘はつかない。策略は誠なり」が教え。
協力者は命懸けで情報を取ってきてくれるので、絶対に裏切らないという互いの信頼が必要。

仁丹ケースを半分に仕切って、毒と普通の仁丹をいれて、自分が食べたあとに、相手に食べさせて毒殺。
怖い。
あと、砂糖壺に、砂糖と毒を半分ずつ入れて、自分は手前の方をすくって入れてコーヒーを飲み、相手にすすめて、コーヒーの中に入れさせる方法もあるそうな。

「秘録・陸軍中野学校」(正と続)番長書房版(S46)と新潮文庫版(H15)読み比べ。
写真で赤丸してるのが、文庫版には収録されてない章。

S46年版、暗号の具体例が載ってて面白い。
ラジオドラマで同じセリフ2回言ったら、それが暗号を解く鍵。
インド、ミャンマー、ベトナム、タイの独立支援の話なども。

スイス公使館の暗号を盗む話。マッチ箱に石膏を入れて、そこに鍵を押し当てて型を取るっていう。へー。
戦争前後14ヵ国の暗号を盗んだそうで、そんなに! ソ連が鉄壁なので、他の国からソ連情報を取ろうとしたそうです。

戦争末期、日本で潜入捜査してた人が、若い男子が少ないもんだから、次々「うちの娘の婿に!」と言われるもんで、下宿先転々としないといけなかった話もあった。
インドネシアに現地版中野学校を作って、独立運動を手助けした、柳川宗成中尉の話が出てきました。戦後も、現地に残った人がいるみたいですね。

新潮文庫版の後書きに、卒業生のその後が載ってた。
不可解な事件が起こると、卒業生の仕業と思われて、GHQか警察が家を訪ねてきたという。
ヒストリカ映画祭の川上氏のトークで「石川五右衛門も芭蕉も忍者と思われてる」って話があったけど、スパイも勝手に「あいつら何でもできるだろ」と思われてる。

同窓会で作って会員のみに配った学校史、番号を振って誰に渡ったのか分かるようになってる。スパイっぽい。
終戦間際の中野学校の様子は、こちらにも載っています。
https://www.meiji.ac.jp/noborito/event/6t5h7p00000gn1xj-att/2013-2.pdf#search='%E4%B8%AD%E9%87%8E%E5%AD%A6%E6%A0%A1+%E6%B3%89%E7%8F%AD
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