2005年11月07日(月) |
麻生新奈さんの【白い鳥、ことり】 |
私小説といわれてしまうと、ちょこっと感想が書きにくいのですが。(汗) あくまでも登場人物うんぬんの勝手な解釈は、かなり違っていてもひらにお許し願います。
この作品を読んで感じたことは、実にリアルで実際にありそうだな……ってことでした。 (いや、本当の話なのだから、リアルで当たり前なのだけど) ゆえに、私の場合、作者が何をいわんとしているか? ということよりも、疑似体験したような刺激をいただきました。 白いセキセイインコというのは、何か精神的な比喩でもあるのかな? 妙に印象的でした。 たまたま私の好きな作品の中でも使用されていて、そのときの印象と、サイトのページの黒に白い羽根の絵などもあいまって、余計に鮮烈に感じました。
葬儀の様子は淡々としながらも、実に人間観察がなされていて、それでいて「私のほうが泣けてきた」「開き直って泣いた」など、実は感情の高まりがピークに達していたのだな、と思います。 「Y子おばちゃん」は泣いて見せた方がいい……とか、見舞いも行かなかった人間が泣くのはどうの、などと、葬式に出ている人たちの心証などを、理性では冷静に分析しながら、感情は別の反応をしている。 思えば、誰もが人の死は悲しいというだろうけれど、実は何も知らずに葬式の席ではしゃいでいる子供たち同様に、受け取り方や感じ方は微妙に違っているものです。 むしろ、大叔母という人が亡くなって悲しい……というよりも、ある人生を歩んで来た人が老いて死んでいくという、実に当たり前のことではあるけれど、それを目の前に突きつけられた衝撃をより鮮明に感じました。
私も、祖父が死んだり祖母が死んだりして、葬式の度に色々思うところがあります。 骨拾いするたびに、頭蓋骨をコチコチ割って小さな箱に入れられるなんて嫌だな、別の埋葬法にして欲しいや……なんて考えたりします。あれを見たら、死んだら人は物だな……なんて思うんですよね。 また、救急病棟の看護婦の友人から 「人が死ぬのを見るのが当たり前になって、遺族が泣いているのを見ても何も思えなくなった。私って、心が麻痺しているのではないかと思う」 などという相談を受けたりしました。 そう悩む時点で、友人は死に対してものすごくストレスになっていると感じました。 先にも書きましたが、作者の思惑をきっとかなり外れて、改めて自分が死をどのように感じ、恐れているか? などと、色々思い起こさせるお話でした。 特に老化の一途をたどる身としましては、非常に興味深く面白く(いや、おもしろがっちゃいかんのだが)読ませていただきました。 ありがとうございます。
(a&c投稿済み感想)
*補足*
白いセキセイインコの描写で思い出した作品というのは、沖美沙都さんの【迷宮病棟】です。 あの作品も精神的な夢の中の象徴として、白いセキセイインコが登場しています。だから、何か夢分析とか精神分析のいわれがあるのかな? などと思ったりしたのです。 麻生さんの白い鳥は、老いさらばえて死んでゆく象徴。沖さんの白い鳥は、もっと傲慢なのだけど、やはり食事できないで飢えて死にかけてゆく少女の変化のようなもの。 どちらにしても、自分では何ともしがたいような、逃れられないような圧迫感があり、しかも背景色は黒に決まっている……などと、勝手に思ってしまうのでありました。 (^0^;
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